文学の通史 第二巻2009/03/29 23:44

1961年に刊行された"Histoire generale des litteratures tomeII"(文学の通史 第二巻)を拾い読みしてみた。表紙には中身がわかるよう章の表題が掲げられている。「ヨーロッパの16世紀:新時代の夜明け」、「ヨーロッパの王族(17-18世紀)」、「1848年までのロマン主義」とあり、ヨーロッパ各国の文学史を通観した構成となっている。目当てはもちろんヨーロッパの16世紀の所のフランス文学だが、この本の良さは図版が豊富に載っているところにある。当時のユマニストのオールスターが社会情勢と関連付けながら紹介されている。ノストラダムスについての項目はないがジャン・ボダンの項で言及されている。(65頁)ボダンは異端審問の裁判官として魔女狩りを推奨したことで知られる。今の目で見ると、まったく不合理な迷信としかいいようがないが、1581年の作品『魔法使いの悪魔憑き(デモノマニー)』が魔女狩りを助長したらしい。

同様の迷信なり、安易に信じ込むという、魔法使いに対する信仰も幅を利かせていた。その一例として「ミシェル・ノストラダムス師の予言集」(1555)を挙げている。「これは何度も再版された。今もなお実際に1940年と1944年の間に現れている」との注釈がついている。ノストラダムスとボダンの直接的な接点はなかったと思われるが、最初の妻と子供を失った際に異端審問から呼び出されたというエピソードもあるのでこうした所に引用されても不思議ではない。上でいう再版された予言集はどの版を指しているのだろう。期間を示している点を考慮すると、以前このブログでも紹介したことのあるアンドレ・スチヴェヌの『現代フランス語訳ノストラダムス、百詩篇集』或いはシャルル・レイノー・プランスの復刻版を指すと思われる。確かに予言の妄信に関してちょうどいいサンプルといえる。

なお、本書の64頁には「1548年に七人の子供の運命についてカトリーヌ・ド・メディチとアンリ二世がノストラダムスに相談している版画」が挿入されている。(肖像画コレクション38番参照)版画の出典はフランス国立図書館との注記がある。しかし注釈は明らかに誤りである。1548年にノストラダムスが国王と会見した事実はなく、恐らくマリ・ド・メディチと家庭教師を描写したものでノストラダムスとは関係がない。ショマラによれば、1577年に出版された"Les Ages de la Vie"のシリーズ7番が出所でジャン・ウィリーの作品とある。