怪奇の解剖学2009/03/02 23:46

http://www.books-sanseido.co.jp/blog/jinbocho/2009/03/4-18.html
3月1日から神保町の三省堂書店本店4Fフロアの奥で、「奇想・妄想・摩訶不思議! 古書フェア」が開催されている。子供の頃読んだ懐かしい本が並んでいる。何か掘り出し物でも見つからないかとぶらっと覗いてみた。すると、今はなき大陸書房のオカルトシリーズや黒沼健氏の物語ほか、ほぼ美品に近い本が厳選されて所狭しと置かれていた。ノストラダムス関係で何かないかと探してみると、昭和61年に国書刊行会から超科学シリーズ4『怪奇の解剖学』が目に留まった。昔、検索をかけていたときに章立てで「ノストラダムス」があったのを思い出した。手に取ってみると、本は20年以上も前とは思えないほど、ほぼ新品状態である。原題はOdditiesで「奇異な出来事」を意味する。表扉には、著者ルパート・T・グルード、諸井修造訳、南山宏/編・監修 とある。

原著は1928年が第一版で、1944年に第二版への序文がくる。「はじめに―弁明として」を読むと、この本に所収のエッセイは、文字通り不思議な話を脈絡なく寄せ集めている。そのスタンスは「正確な典拠を挙げて、事実に嘘偽りがないことを示すよう、最大の配慮を払った。」というくらいできるだけ原資料を広範に参照している。まずはノストラダムスの章をチェック。本の最後、11番目の話として載っている。最初の方は様々なイギリスの予言者の話が出てくる。そこでおっと思ったのが、J・W・ダン氏の『実験的時間論』が予言能力の根拠として引用されていること。ジェームズ・レイヴァーの本(邦訳403頁)にもこの名がみられる。予言能力を語る際の典拠の一つとして扱われている。本題のノストラダムスに関しては、四行詩を引用して的中したとされる予言の紹介にすぎない。

どこが典拠かといえば、アナトール・ル・ペルティエ、エティエンヌ・ジョベール、ジュヴァリエ・ド・ジャン、モトレーらの名前がある。当時では権威と見なされていたフランス語文献を参照しているのだから、まあ及第点をあげてもいいだろう。図20には大英博物館所蔵の1605年版予言集の1頁のコピーが載っている。ただし、本文には口絵に示されていると書いている1605年版予言集の表扉のコピーはどこにも載っていない。日本語版では削られたのだろう。残念である。