再評価をめぐる雑感について2020/11/25 21:16

本ブログで久しぶりに記事を投稿したところ早速sumaruさんのノストラダムスの大事典 編集雑記で丁寧なコメントをいただいた。まずは、本のタイトル『超能力事件 クロニクル』や『UFO事件 クロニクル』の表記を間違えてしまったことをお詫びします。下書きのメモ帳のタイトルはクロニクルになっているのでちゃんと認識していたはずだが手が滑ったとしかいようがない・・・

再評価をめぐる雑感のなかで「英語圏・仏語圏では」という記述についての背景を説明されている。そもそも、これが文章の「てにをは」レベルの話であるのは十分承知している。ノストラダムスが英語圏・仏語圏ではルネサンス期文化人として再評価されつつある」というのも少し偏った見方ではないだろうか。と書いたのは「では」という言葉に引っ掛かったためだ。読み手からすると他の言語圏ではそういう評価がまったく行われていないとも読めてしまう。これが読者に対するミスリーディングにつながるのではないかと気になったのだ。sumaruさんは「ただ、私の記述は、あくまでも「その後がほぼ続かなかった」ことへの懸念から出たものです(「日本で例えば『モンスト』キャラの元ネタ等という形でしか顧みられなくなっていくのだとすれば」)。」とも述べている。英語圏・仏語圏でも相変わらず予言解釈本は出版されており、英語圏・仏語圏のすべてのノストラダムス本がルネサンス期文化人として評価しているわけでもないので「続いている」かといえばそういうわけでもない。

言うまでもないが、sumaruさんの著書に対して「他の国にも触れて研究者の名前を出せ」とか「重版のときに修正しろ」とか要求する意図は毛頭ない。その他にも良質な研究書あるよ、という一例でグルーバーやカールステット、ペンゼンスキーを挙げたに過ぎない。私見では現在最良のノストラダムスの研究史を概観したもので、Nostradamus The Prophecies, Penguin Books, 2012 のなかのステファン・ガーソンによる「さらなるリーディングのための提案」(XIX-XXII)がある。sumaruさんのいうようにそのほとんどが仏語・英語文献であることに異論があるはずもない。ただ、そのなかにグルーバーやカールステットも含まれている。もちろんガーソンにしても日本語やロシア語の文献は読み込んでいないだろうからここには出てこない。ただ、自分がフォローアップしていない言語のものは中身を検討できないから研究書として扱わないというのはどうなのかと疑問に感じる。そうであるならば「自分の研究範囲である英語圏・仏語圏では」というように書いておいたほうが誤解がなく、わかりやすいとは思う。

ロシアのペンゼンスキーはノストラダムスをルネサンス期のユマニストと見なして様々なテーマで豊富な文献を引用して予言を紹介している。2008年に出版されたНострадамус(ノストラダムス)は偉人の伝記シリーズの610番にあたり有益な啓蒙書を出版している。この本はざっと目を通したが良書と感じた。日本で言えば講談社選書メチエのような感じだろうか。ペンゼンスキーの見方は懐疑派でもなく信奉派でもない中立派でルネサンスという時代背景を重視しており、わりと自分のスタンスに近いと感じる。ノストラダムスの伝記も学術的なもので参考になるところが多い。ペンゼンスキーは2003年にНострадамус. Миф и реальность(ノストラダムス、虚像と現実)とМиф о Нострадамусе (ノストラダムスの虚像)、2010年にはМишель Нострадамус: Эпоха великого прорицателя(ミシェル・ノストラダムス、大予言者の時代)、2016年はМишель Нострадамус. Центурии : книга пророчеств(ミシェル・ノストラダムス、サンチュリ、予言書)等の研究書を出版している。2008年以外の本は未見であるが、どれも重厚な本で図版も豊富なようなのでいずれは入手しておきたいと思っている。

コメント

_ sumaru ― 2020/11/25 22:22

1点だけ

>自分がフォローアップしていない言語のものは中身を検討できないから研究書として扱わないというのはどうなのかと疑問に感じる。

私は「自分がフォローアップしていない言語のものは中身を検討できないから研究書として扱わない」などとは一言も申しておりません。
グルーバーにしても、優れた研究書であろうことは認めたうえで、自分なりの見解をあの場に書いたつもりです。

_ 新戦法 ― 2020/11/26 23:18

sumaruさん

論旨がうまく伝わらなかったようです。失礼しました。

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