ノストラダムス注釈書のランク付け2009/10/27 22:40

海外のノストラダムス解釈本には、たいてい巻末に参考文献が掲げられている。たとえ学術的な研究書ではなくとも、一冊の本の著者としての最低限のマナーといえる。なかには単なる書誌情報に留まらないでプラスアルファの情報を提供しているのもある。ヴライク・イオネスクの『ノストラダムス・メッセージ ソ連体制崩壊・・・第三次大戦篇』では「世紀別ノストラダムス文献目録」で関連書の一部に短評を付している。これは1976年の初版本にも見られる。わりと客観的な見方もあれば、イオネスクの偏見ではないかというものまで、様々だがひとつの見方として面白く読める。他に日本語で読めるノストラダムス本の客観的な寸評が、ピーター・ラメジャラーの『ノストラダムス百科全書』272頁以下の「本、映画、ヴィデオ、レコード、インターネット」に載っている。英語圏のノストラダムス本にランク付けするというユニークな形をとっているのがジョン・ホウグの"Nostradamus, The Complete Prophecies"1997(ノストラダムス、完全予言集)で、2000年にも再版されている。

ホウグがノストラダムスのすべての予言作品に原文、英訳、注釈を付している962頁もの大著である。とても通読するという感じではなく、ビリーバー側の解釈を参照する辞典のような印象である。予言を現代から近未来に投影したい解釈者にとっては有用な本であろう。ホウグは912頁以下に「ノストラダムスの比較的知られた注釈書」について星1つから5つまでの評定を、独断と偏見でつけている。一応会社の格付けのようなスタイルでわかりやすい。星5つとは、優れた学識と備えている。革新的だが偏見のない注釈で形而上学的理論と懐疑論の適正なバランスを保っている。グレードはAからB+。途中省略して、星1つの基準とは、素人的な探究。よくて好事家による作品、最悪バイアスのかかっていて研究の役に立っていないもの。ニューエイジ理論。評定も客観的な尺度を設定しているようだが、そこには最終的にホウグの判断に依っている。

5つ星は全部で5冊。ジョックマンズの"Rolling Thunder"(轟く雷鳴、来るべき地殻変動、未見)、キドゴの"The Keys to the Predictions of Nostradamus"(ノストラダムス予言に対する鍵)、レイヴァー、レオニ、スチュワート・ロッブの"Prohecies on world Events by Nostradamus"1961 がホウグの最高ランクを得ている。逆に最低ランクの星1つは、邦訳も出ているドロレス・キャノンの三部作、ヒューイットの二冊、そして日本で初期に対訳の出ているヘンリー・C・ロバーツの本に付されている。最低ランクはともかく、現在の目で見ると、最高ランクに多少の疑問があるが、全体的には概ね妥当なところと見る。日本の関連本にも、こうした評定を与えてみると面白いかもしれない。もっとも星1つのオンパレードになりそうな気がする。