ノストラダムス病原体2008/10/29 23:51

http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4150307377.html
日本におけるノストラダムス現象が発散していった後にポップカルチャーとしてノストラダムスが一般に浸透していくことになる。予言に関心がなくともノストラダムスという「言葉」を知らない人は少ないだろう。「ノストラダムス」が独り歩きを始めて小説のネタなどにも取り込まれていくのも自然の成り行きといえる。書籍を詳細検索かけると、いわゆるノストラダムス本以外の本も結構引っかかってくる。梶尾真治 フランケンシュタインの方程式―梶尾真治短篇傑作選 ドタバタ篇 早川書房 2003年 を読んだ。

タイトルにもあるように、6篇のドタバタSFが収録されていて、そのひとつに「ノストラダムス病原体」という短編がある。普段はあまりこういった小説は読まないのだが、一言でいえば娯楽のための本で、サッと流して読んでもオチだけで話はわかる。梶尾氏はこうした短編がお得意のようでハヤカワ文庫にも別なテーマで傑作選が出版されている。よくもこんなナンセンスな笑い話を思いつくものと感心する。味覚をコミュニケーションの手段とする宇宙人との交流のドタバタはなかなか面白いストーリーと思う。「ノストラダムス病原体」は「1999年七の月、空から恐怖の大王が降りてきた」で始まる。

ここでの恐怖の大王の正体は隕石の激突を受けて地球に落下した通信衛星「怖いものしらずのシーザー」。そこに付着した病原体が蔓延して日本に大混乱を巻き起こすドタバタの抱腹絶倒の話である。ノストラダムスは人類を滅亡に導こうとするもののアイテムとして利用しているだけで予言解釈などとはまったく関係がない。初出一覧を見ると、SFバカ本白菜編(1997年2月)で他の短編がS-Fマガジンなどの雑誌に掲載されたのに比べると異色である。1999年にあと2年と迫った、ちょうどいいタイミングで書き下ろしたのだろう。