プロフェッショナル仕事の流儀12008/10/01 23:58

茂木健一郎 NHK「プロフェッショナル」制作班=編 プロフェッショナル 仕事の流儀 1 日本放送出版協会 2006年 を読んだ。この本はNHKの番組内容を単行本化したもの。「プロフェッショナル」という番組は確か羽生が出演していた時に見た記憶がある。「プロジェクトX」では様々な開発プロジェクトに関わった無名のリーダーを主役にサクセスストーリを描いたドキュメンタリーであったが、こちらは時代の最前線にいる「プロフェッショナル」に焦点を当てて如何にして成功をつかんだのかをテーマとしている。茂木氏は脳科学者ということでそれぞれの「プロフェッショナル」に対して独自の視点で分析したコラムを書いている。

この本は初巻だが紀伊国屋のウェブを見ると、#15まではナンバリングされているが、その後は表紙のイメージを白から黒に変更してナンバリングなし、副題をつけたスタイルで継続して出版されている。確かにその分野の「プロフェッショナル」たちの仕事の進め方に対する矜持は素晴らしいと感じる。しかしこの手の話は多少は割り引いて受け取るのが賢明である。事実に基づいて書かれているのだろうが、その事実もいいところ取りをして必要以上に美化している可能性もある。参考になる部分もあるが、そのまま自分自身に当てはまるものではない。が、世間に認められた一流の人たちの考え方を聞くのは面白い。

「プロフェッショナルとは、何か。」これを取材した人たちに最後に質問している。自分ならどう答えるか。まだまだ見つかっていない。取り合えずこのシリーズを順に読んでいきじっくりと考えてみたい。

アルブロンのコレクション第二弾がアップされた2008/10/05 23:57

http://www.propheties.it/halbronn/Second%20Part/index.html
相変わらずIE6.0で立ち上げると時折エラーが発生してファイルがフリーズしてしまう。そうしてデスクトップ上に自動的にエラーログが作成される。強制的にシャットすると今後はエラーの送付を聞いてくる。このエラーが発生するのがマリオのProphecies on line(http://www.propheties.it/)でここしばらくアクセスしていなかった。試しにネットスケープ7.1でアクセスすると問題なく該当ページを開くことができた。すると8月25日の新着情報にアルブロンから貸し出してもらった文献の電子化データの第二弾がアップされていた。なんと45本もの文献が新たにエントリされている。

早速開いてみると、これまで入手した文献とダブっているものもあるが見たことのない手稿も見出される。貴重な文献が簡単に利用できるというのは本当にありがたい。そしてこの部分はすべて無料なのである。ただしひとつ難点はそれぞれの文献について書誌情報が乏しいことである。フォルダ名称で情報としてあるのは、刊行された年と省略された本のタイトルのみである。(年代がないものもある)細かく本文を追っていけばいいのだがやはり少々不便である。それでもひととおりデータをダウンロードしようとDS downloderで巡回してみたがなかなかうまくいかない。ずっとダウンロードを回しておいたら取り合えず45個のフォルダが作成されていたが中身が不完全なものも多い。

時間を見つけて各ファイルごとにダウンロードしていけば何とかなるだろう。電子データもそうだが、紙の本も寝床に積んでいたが本日ようやく本箱が二段で届いて収納することができた。いらない本はどんどん整理して捨てていかないとまたすぐ一杯になってしまう。何においても整理整頓は必要である。

転職徒然草2008/10/06 23:48

http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4101406219.html
リクルートエイブリック 編 転職徒然草 新潮文庫 2003年 を読んだ。この本はリクルートエージェントのサイトの一コーナーである「転職徒然草 転職しなくても、人生は続く~」(http://www.r-agent.co.jp/knowhow/column/)のコラムをまとめたものである。2002年2月5日までの記事を再編集している。現在でもずっと続いているが、当初に比べると更新は週1回とペースダウンしている。内容は特に転職に関するノウハウを示したということではない。転職にまつわる実話をもとにそれぞれの人生の泣き笑いを、時にはユーモラスに、時にはシリアスに描いている。リピートしているサイトは少ないのだがこのコラムはずっと読んでいる。

世の中にはいろいろな会社があって、いろいろな職種があって、いろいろな家庭環境の人がいるものだとしみじみ感じる。実在の人物をモデルにしているだけに予期せぬ事件でもリアリティがある。現在は日本の伝統的な終身雇用制は崩れている。そう何度も転職するとは限らないが、ほんの小さな偶然がきっかけで不思議な縁により会社と転職者が結びつく。考えてみると、見知らぬ人との出会いも同じことがいえる。けれども、だんだん慣れてしまって出会いの新鮮さを失ってしまうこともままある。このコラムでは転職者の人生を左右しかねないアドバイザーの微妙な立場も巧みに描かれている。

果たしてどんな人が執筆しているのか。巻末の自己紹介を見ると、もともとはリクルートエイブリックの社員のお二人が交替で書いているらしい。もっともアドバイザーという仕事を離れてもこのコラムは担当しているようで、実際の話を取材し、それをアレンジして発表していると思われる。面白い話が多いので今後も続編が出ることを期待したい。

竜王戦展望、初代永世竜王はどちらか2008/10/07 23:54

http://live.shogi.or.jp/ryuou/
いよいよ羽生が最後の永世称号である竜王戦に名乗りを上げた。これまではなかなか挑戦者になることができなかった。今回も一回戦で敗れて敗者戦(出場者決定戦)に回ってやっと1組5位に滑り込んだように快進撃とはいえない。しかし決勝トーナメントに進出すると少し苦しい将棋を往年の羽生マジックを思わせる逆転劇で勝ち進んでいく。挑戦者決定戦でもなんとか苦しい局面を乗り切った。こうした流れからすれば羽生に勢いが出てきたといえる。確かにここまで今期すべてのタイトル戦に出場している。今月号の将棋世界では「羽生、止まらない快進撃」と表紙にある。ところが将棋世界発売の時点ですでに王位奪取に失敗、その後も棋王戦で久保に敗れ、日本シリーズでも敗退。ちょっと小休止といったところか。

迎え撃つ渡辺のほうはどうも成績がパッとしない。一応大和証券杯ネット将棋・最強戦では優勝を果たしたが、本来若手がB級1組からA級に上がるときには勢いに乗って一般棋戦で勝ちまくっているのが普通である。前期の順位戦では黒星が先行して降級の危機さえあった。さすがに今期はそんなことはないだろうと思いきや勝ったり負けたりとすっかりB1に落ち着いてしまった印象を受ける。前期B1で圧倒的な勝ち星を挙げてA級に復帰した鈴木はA級で初日が出ていない。A級とB1との差は大きい。今の渡辺がA級で指したとしても残留できるかどうか微妙なところ。これまで竜王戦では不思議といい将棋を指して防衛を積み重ねてきた。今回はいよいよ羽生世代の御大将と相まみえるのだがプレッシャーは渡辺のほうがより大きいだろう。

普通に考えれば実績はいうまでもなく、現時点での成績からも羽生が圧倒するというシナリオしか思い浮かばない。しかし羽生もここに来て一時の勢いが止まった感じがするし、戦略家の渡辺が何か秘策を用意しているとすれば意外に接戦となるかもしれない。勝ったほうが永世竜王というドでかい勝負は10月18日から始まる。中継も充実しているし将棋ファンであれば見逃すことのできない必見のカードである。

裏切られたノストラダムス2008/10/11 23:47

アルブロンの文献コレクションをざっと眺めていると見覚えのあるデザインが目に留まった。"Prevoyance"(1582年まで6年間の予測)という本に、偽年代1568年版ノストラダムス予言集の表紙(http://www.ne.jp/asahi/mm/asakura/nostra/chrono/1568_BN101.htm)に載っている楕円の枠のなかに人の姿のあるカットと同じものが見つかった。このデザインは1867年に出版されたアナトール・ル・ペルティエの著作の表紙に用いられている。(http://books.google.co.jp/books?id=IDIJAAAAQAAJ&as_brr=3)1981年にフランスで出版されたエリザベート・ベルクールのノストラダムス本の表紙にも載っており、このデザインについて解説しているのを思い出した。

ベルクールの本は原書が出た直後1982年に邦訳『裏切られたノストラダムス』が出版されている。この本ではベルクールの師であるアルベール・スロスマンが序文を書いており、フランス第一のノストラダムス研究家と紹介されている。試しに著作を検索してみると、1982年1983年にベルクールとの共著があるけれど本のタイトルを見る限りノストラダムスの研究書ではない。この本は単に当時フランスで起きたノストラダムスブームを批判するために書かれたものである。当時は様々な史料を引用しているので学術的にしっかりした本かと誤解していた。今見ると、6-100の警告のラテン語詩の解説で古代の「神の儀式」に従ってかけられたノストラダムスの呪いなんて想像の産物であることが明らかになっている。

で、ベルクールは「表紙はノストラダムスの希望によって念入りにデザインされた。楕円形のなかにノストラダムスの姿がはっきり見て取れる」(同書96頁)と書いているが誤りである。1581年の本ではそれぞれの年に対応させて惑星を司る神々を描いた挿絵が載っている。そのうちの一つユピテル神は1597年を支配するもので、楕円形のなかの人物は決してノストラダムスではない。もともとベルクールの引用した1605年版予言集は偽年代版で、挿絵は出版者によりノストラダムスの死後別の本から転用されたものでノストラダムスが希望したデザインというのはどこにも実証的な裏付けがない。他にも疑わしい記述が見られるため注意が必要である。