荒俣宏のデジタル新世界探検2008/10/21 23:38

https://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4532163307.html
荒俣宏 荒俣宏のデジタル新世界探検 日本経済新聞社 2000年 を読んだ。もともと「日経パソコン」1998年10月5日号から1999年9月20日号に掲載された記事を再構成したものである。この当時は自分もホームページを開設した頃でインターネットが一般に普及して生活のなかに入り込んできた時期でもある。インターネットの進歩は格段でわずか10年前の話にも関わらず大昔にタイムスリップした感のある話題が懐かしい。連載のあった1998年から1999年にかけてはちょうどノストラダムスの第四次ブームとオーバーラップしている。連載のなかでインターネット上のノストラダムスサイトを取り上げた記事があるというのは以前から知っていたがいまだに読んだことがなかった。

目次に目を向けても「ノストラダムス」を含んだ見出しはない。代わりに「奇説・珍説と呼ばれても自説主張」という記事が載っている。頁をめくると、やはりインターネットとノストラダムスというテーマで書かれている。冒頭の1999年は過ぎ去ったというのは加筆したときに加わった部分だろう。荒俣氏が記事を書いたときはインターネット上に様々なノストラダムスサイトが存在していてメディアでも取り上げられていた。インターネットで自分のページを持ち自説を発表するというのは、てっとり早く独自研究を発表できるというメリットがある。独自の解釈を打ち出した「ノストラダムス・惑星の謎」はサイトの作りもプロ並みで完成度が高かった。その後閉鎖されたが、管理者の方とも少し交流も持てたしいまだに印象に残っている。

老舗の「ノストラダムス研究室」も紹介されている。このサイトでは当時掲示板上では研究家たちの議論が活発でレベルも高かった。荒俣氏は話題になったノストラダムスの最初の妻に関する論文について紹介している。ところで氏の文章を細かく読むと一か所だけダウトが見つかった。ノストラダムスの死亡年を1567年としているが1566年が正しい。海外のサイトで奇説を提唱した「Prophetic Insights」、ノストラダムス予言のパロディ「ノストラダまス」も面白いがいずれも現在はリンク切れとなっている。他にも壮大な解釈を発表していたサイトがあったが残っているものは少ない。現在ではブーム自体が終焉したのは間違いないが、ネット上で「ノストラダムス」と検索してみたところブログなど多くの人に引き合いに出されている。ここに来てノストラダムス現象はついにポップカルチャーの地位を獲得したのかもしれない。