竜王戦第一局は羽生が勝って1勝目を挙げた2008/10/20 01:25

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今しがた注目の竜王戦第一局が終局を迎えた。結果は羽生が後手番で幸先のいい1勝目を挙げた。渡辺の現代的感覚の将棋はモノの見事に羽生に粉砕されてしまった。梅田望夫氏の観戦記 (12)には面白いことが書かれている。佐藤が現代将棋を語るというテーマで30分もかけて書いた記事である。「現代将棋の悪いところが(渡辺さんの側に)出ているのかもしれない」という話を実に興味深く掘り下げている。渡辺の現代感覚とは玉を固めてわかりやすく攻める、本譜はまさにその通りに進んだ感が強い。穴熊に囲い、攻めは53手目▲2三角と打ち込んで角金交換ながら竜を作り桂馬を手駒にする。アマチュアならずプロでさえも先手の指し手がわかりやすく勝ちやすい将棋に思える。

こうした感覚は若手棋士が共通に持っているものだが、羽生がいまだにタイトルを四つも持っているのは、こうした当り前の感覚からさらに一歩抜きんでているからに他ならない。終盤の攻め合いはとても薄い後手陣を持って指しこなせるものではない。終盤の正確な読みがあってこそ、複雑な局面でも茫漠たる暗闇の中をただ一人明るい街灯の下で歩いているかのごとく正しい道を進めるのだ。その手が羽生の86手目△6七銀という決め手だったように思う。この手は攻防の絶妙手。控え室の佐藤も予想だにしていなかったことからおそらく渡辺も見落としていたのではないか。以下は▲7三桂成と角を取ったものの後手玉は詰まず、やむを得ず▲6七金と指して簡単に詰まされてしまった。

この将棋を見ても羽生の終盤の強さがよくわかる。そしてその終盤力があるからこそ複雑な将棋の創りをするのを厭わないのだろう。この1局だけでは早計だが、これまでの渡辺のスタイルは羽生には通じない。次の後手番を負けると防衛に黄色信号がつく。渡辺はこの敗局を糧にして根本的な戦い方の見直しに迫られている。