ノストラダムス大予言の秘密2008/04/12 23:29

ノストラダムスの第一次ブームの折には「1999年7の月の人類滅亡」というセンセーショナルなキャッチフレーズが独り歩きして、当時の若者に漠然とした未来への恐怖感を募らせていた。五島氏の解釈について頭ごなしに批判する者はあったがその解釈が本当にノストラダムスのテクストに沿ったものかまで、誰も調べようとはしなかった。推理作家の高木彬光氏はそんな世相を憂いて、ならばオレが本当のところを調べて大予言ショックを終わらしてやる、と果敢にペンを取った。それが1974年8月に出版された『ノストラダムス大予言の秘密』である。(翌年角川文庫より文庫判が出た)高木氏は五島氏の示したロバーツの英訳本を入手、何冊ものフランス語辞書を参照しながら、それでもわからないところは専門家に聞いてすべての四行詩を検討したという。

五島氏の本が出版されたのが1973年11月、高木氏が最初にノストラダムスのことを書いたのが、『ヤングレディ』1974年2月「問題の書ノストラダムスの大予言は偽りだ」であるからわずか数か月で一応の検討を済ませたといえる。このときの記事は本書の第1章と第12章に組み込まれた。それから2ヶ月後今度は『宝石』1974年4月「1999年7月人類は滅亡しない」で『ヤングレディ』と枕でほぼ同じ文章を発表、他にも年代を記した四行詩を取り上げている。的中率についての文章は本書第7章第8章に組み込まれ、最後は詩人リルケの詩で閉めるのは本書と同じ。雑誌に投稿した記事では、3797年までの未来を予言していたという記述は見られない。

高木氏も本書220頁で告白しているように、最初の段階でこのことを見落としていたらしい。ロバーツ本では英訳のみの手紙二通は当初そんなに細かくは検討していなかったのだろう。フランス語の原文は入手不能と書いていることから、ロバーツ本以外の海外文献を参照した形跡はない。巻末の参考文献にあるように、黒沼健著『世界の予言』とスチュワート・ロブ著『オカルト大予言』のみ一部の予言解釈を引用している。この本の意義を考えてみると、予言集のなかで年代を示した四行詩の存在を示したこと、実際の予言は『大予言』のイメージとはかけ離れて曖昧でわかりづらいと知らしめたこと、五島氏の解釈に強引なコジツケが含まれていること、が挙げられる。

今となっては情報も乏しく内容も古くさいが、その方法論は現代にも生きていると思う。当時は五島氏のノストラダムス解釈に毒されてしまった人々にとって、良き解毒剤の役割を果たしていたのは間違いない。

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