神の計画2008/04/10 22:43

ノストラダムスの知名度が爆発的に広がったのは第一次ブームのベストセラー『ノストラダムスの大予言』からである。当時ノストラダムスのことを引用する場合、五島氏のフィクション混じりの情報をそのまま鵜呑みにしていたものが多かった。そのなかで1974年に出版されたフェニックス・ノア氏の『神の計画―ハールマゲドン・人類最後の日』は予言に関する論文といった趣があり、異色の予言解釈本といえる。もともとノア氏の専門は占星術で確かオカルト雑誌にも占星術コラムを連載していた記憶がある。今改めて手元の本を読み返してみると、著者はなかなかの勉強家で引用している百科事典や年鑑、日本で出ていた乏しいノストラダムス情報、哲学書など参考文献は幅広い分野に及ぶ。

当時は予言集の日本語訳で参照できるものはなかった。ノア氏はリヒャルト・シコウスキィ編の1668年ジャン・リボー版予言集復刻本を所有している。ヘンリー・C・ロバーツ、スチュワート・ロブ、チャールズ・A・ウォード、エドガー・レオニの英訳本を参照しながら四行詩の翻訳を行ったと思われる。ノストラダムス以外にもエドガー・ケイシーやジーン・ディクソンに関する数多くの英語文献を参照している。語学力に長けているのだ。最初に四行詩の訳文を見たときは、文語調の言葉づかいがとっつきにくいと感じた。しかし今の目で見ると、テクストを十分に消化していて訳文も割合まともである。驚くことに逐語訳にとどまらず四行詩をひとまとまりの意味としてとらえ、意訳している部分も見られる。

百詩篇4-18は特に印象に残っている。「至高の学術さらに研磨され、何も知らぬ御仁に咎められん、罪の宣告、天使のごとき追撃、その発見にて死に赴かん」もちろん解釈自体には賛同できないがとてもユニークな読み方と感じた。この本の予言解説は実に手堅く(正確という意味ではない)五島氏のようにハッタリをかませている部分は少ない。(そういう部分も存在する)そのためセンセーショナルな内容を期待した一般読者からすれば少々物足りなさを感じたかもしれない。