ノストラダムス関連の翻訳について2008/04/06 23:56

ノストラダムスに関するホームページなぞを開設していると、たまに予言テキストの相談を受けることがある。テキストのソースがどこにあるかという質問が多いが、乏しい記憶や手元の資料を参照しながら推理してみるのもなかなか楽しい。はるさんの示した英訳文もなかなか興味深い。訳に苦労されているとのことで微力ながら検討してみたい。出典が明らかでないので推測でしかないが、この警句を読んでカトリーヌ・ド・メディシスがノストラダムスを宮廷に招いたとするストーリーは小説の一部分であると思われる。1555年ノストラダムスはおそらく王妃の意向で召喚されたのだが、信奉者が主張している1-35の四行詩について質問したという史料は残っていない。王妃が暦書や予言集の評判を聞いて関心を持ったというのは事実と見てよい。

その背景として、よく引用されるのがイタリアの占星術師リュク・ゴーリックの警告である。エドガー・レオニの本にラテン語のテクストが引用されているが、「アンリ二世が56歳、63歳、64歳の誕生日を生き長らえたなら69歳10ヶ月12日までの寿命を全うする」といったごますり予言の後にこう続く。「限られた場所の中では、いかなる争いも避けられますよう。特に四十一歳に近づくにつれ、頭に受けた傷がもとで、またたくまに盲目となり、お亡くなりあそばすこともありえます。ご注意めされませ。」ディヴィッド・オーヴァソンの『ノストラダムス大全』によれば、ゴーリックは星回りから上記のような予言を引き出した。これはランゾウィウス(1526-98)が1580年に出版した資料に載っているらしい。アンリ二世のホロスコープは修道士のジュンティーニ(1523?-90)をはじめ、何人もの占星術師が書き上げており、アンリ二世の死期を占星術的に調べると、頭を怪我して死ぬことがつぶさにわかる、という。

はるさんの示した英訳文を意訳するとこんな感じになるのではないか。「私はあえて書き記すことはしないが、隠秘哲学(占星術)の教義に従うとホロスコープはある事柄(頭を怪我すること?)を示している。何者かがそうしたことを実行せぬよう、国王はご自身のことを警戒されたし。」小説だが『クレーヴの奥方』(岩波文庫)が細部の状況を語っている。はるさんへ、何かの参考になれば幸いです。