ルネサンスとは何であったのか その22008/04/17 22:38

http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4101181314.html
『ルネサンスとは何であったのか』の後半の部分を読み終えた。ルネサンスの舞台はフィレンツェからローマに移る。ここではローマ法王がルネサンスを牽引する。ところが1527年の「ローマ掠奪」で神聖ローマ皇帝のもとのドイツ傭兵に攻略されて1週間の強奪、破壊、殺害と焼き打ちを受ける。このとき芸術品が盗まれ、ルネサンス様式の建物も破壊されてしまった。(この書名の本も手元にあるのでじっくり読んでみたい。)そうして法王庁が反動宗教改革派(初めて聞いた)に占められてヴェネツィアへとルネサンスが移行したとある。「グレーヴェにて」では主に大航海時代の流れを追う。未知の世界の探求は読んでいて心躍るものを感じた。

ヴェネツィア話では共和国という政治体制が興味深い。そのなかでどうして自由を満喫できたのか、経済と国家の関係において、今でいうリスクマネジメントがうまく機能していたというのは驚きである。政教分離を上手にコントロールできたのはベネツィア人が時代を先駆けて合理的だったからか。本書は様々な疑問を読者に呈し、考えさせるという一種の思考実験の形を成している。結論として、ルネサンスを心眼や克己に置き換えられるという。けれども新プラトン主義から魔術を含むルネサンス精神のことがすっぽり落ちている感じもして物足りない。巻末には本文で触れられていないルネサンスの主役を含むリストと簡潔な紹介が載っている。概観するのに便利である。

そして最後に解説の代わりに対談。この部分が文庫での書き下し。対談相手の三浦氏のコメントはあまりにも塩野氏に媚びて褒めちぎっている。塩野氏も昔に受けた学者先生の大人げないヤッカミ(?)を気にしていないといいながらもさりげなく批判、なぜ自分に攻撃してくるのか勝手な分析を行っている。その学者たちっていったい誰なんだろうか。再三、三浦氏が塩野氏を誉めて、塩野氏は嬉しいと答えている。本人たちはごく自然な話の流れなのだろうが、せっかく本編を読んだ後で少々しらけてしまったのは自分だけだろうか。ルネサンスシリーズが文庫化されるというので面白そうだったら次も読んでみたい。