モンテーニュとの対話2008/04/27 21:42

http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4393332709.html
荒木昭太郎 モンテーニュとの対話 春秋社 2007 を読んだ。ミシェル・ド・モンテーニュ(1533-92)が著した『エセー』に取り上げられた主題に対して、著者が噛み砕いて解説するとともに、自分の過去の経験を照らし合わせて対話している。全部で8章から成り、それぞれ5つの節に分かれている。文章は簡明な書き言葉で、読者に穏やかに直接語りかけるスタイルをとる。モンテーニュはノストラダムスに比べると生まれた年が30年違うため、おおよそ一世代ずれているが、ほぼ同時代の空気を吸っていた。モンテーニュは古典のテクストから同時代の書物まで広範囲に親しんでいたインテリであったから、ノストラダムスの名前くらいは知っていたに違いない。

巻末の表題一覧を見ると『エセー』の第一巻11章に「いろいろな予言について」というテーマがある。宮下氏の新訳を読むと、特にノストラダムスについては言及はなく、ヨアキムと皇帝レオの予言に触れている。荒木氏は文庫クセジュのロベール・オーロットの『モンテーニュとエセー』を翻訳している。それに比べると字面が大きく、すらすらと読める。エセーとは日本語でいえば随筆、読書や旅行で経験した知に対して自分自身の意見や考えをまとめたもの。『エセー』はそういったジャンルの先駆けである。レベルの違いはあるにせよ、個人の日々の出来事についての感想を記す、今日のブログのルーツというのは言い過ぎだろうか。

この本を読んで思うのは、人間の感情というか基本的な考え方はそれほど変わらない。モンテーニュの言葉には時代を超えて心に響くものが多い。人の価値観は各々の時代背景のもとで多様に変わるものだが、人生をいかに過すべきかというベーシックな部分は共有できる、と改めてそう感じた。