竜王戦第二局は佐藤二冠が勝ちを拾った2007/11/01 23:50

http://live.shogi.or.jp/ryuoh/
竜王戦第二局の二日目。仕事帰りの電車のなか、結果が気になったので携帯から上のサイトにアクセスしてみたらすでに終わっていた。佐藤の狐につままれたような終局後の写真が見えた。どうやら終盤大逆転だったらしい。帰宅してからパソコンの電源を入れて棋譜を並べてみた。渡辺の封じ手は▲5八金。馬を作らせる手がミエミエなので考えづらい手だ。素人目には四枚穴熊に馬付きで後手必勝形に思えてくる。しかし桂交換から▲8六に桂馬を据えて端攻めを狙うと先手の模様が良さそうにも映る。とはいえ銀冠はこうした展開から終盤食いつかれて負ける場合が多いのだ。

先手は読み筋通り端を攻める。▲8五桂のおかわりから後手玉の金がブラになったところでは先手優勢は間違いないだろう。後はどうやって先手が寄せるかだったのだが・・・終盤時間がなくなって記録係の容赦ない秒読みの声が聞こえてくる。上の局面で一旦受けにまわった▲6九金が痛恨の落手。本譜はこの瞬間、穴熊崩れの後手玉が詰まないタイミングで佐藤の必殺の寄せ△8六桂から△8九銀が炸裂した。渡辺自身も一瞬の出来事で何が起きたのかわからなかったに違いない。ここは▲6八銀と馬取りに打てば明快に先手勝勢であった。

最後渡辺は秒に追われて気持ちの整理がつかないまま馬と竜を切って王手をかけるが後手玉は詰まず無念の投了。佐藤が九死に一生を得たといった勝利であった。やはり両者ともまだまだ不調の波を抜け切れていない。終盤ポッキリ折れたのは悔いが残るだろうがこれで改めて五番勝負。早く調子を取り戻したほうにタイトルがほほ笑むはずである。

定年病!2007/11/02 23:51

http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4062724405.html
野末陳平 定年病! 講談社+α新書 2007 を読んだ。人間、学校を出て社会に出ると生活のために仕事をしなければならない。会社勤めの身としては毎日満員電車に揺られて遠距離通勤することになる。時々早くリタイヤして悠々自適な生活を送れればと思うこともある。しかし、この本によると定年というのは現実的には使用者側からの一方的な解雇、すなわち失業に他ならない。今までは休む間もなく仕事に明け暮れたサラリーマンが定年を迎えると精神的な落ち込みを経験するという。これを定年病と呼ぶ。ハッピーリタイヤメント、理想の定年後はどういったものだろうか。

この本では定年ととも陥りやすい罠をいくつか挙げる。よく第二の人生を田舎暮らしや海外暮らしでというパンフレットも見かけるが現実はそう甘くはない。老後のための大切な退職金を事業にまわすのもリスクが大きい。暇つぶしの趣味もしょせんはすぐ飽きてしまう。自分の周囲にもすでにリタイヤした人、リタイヤを目前にしている人がいて話を聞く機会がある。充実した定年後を送るためにはお金と多趣味とその仲間が必要になってくる。自由な時間というのは自分の居場所がなくなることで誰しも一度は定年病にかかるのだという。確かに毎日が日曜日なら休みのありがたみはなくなる。

最近は60歳代といってもまだまだ若く、仕事ができる余力が残っている。であれば大幅に収入が減るのを覚悟した上で好きな仕事を続け、何か予定を入れるようなエネルギッシュな活動を続けることが定年病にならない特効薬となろう。定年なんてまだまだと思っていても確実に年は過ぎていく。人生を楽しくできるよう自立していくことが大切である。ちなみに巻末の「定年病」自己診断フローチャートをやってみたらめでたく「ハッピーリタイアメント」に辿り着いた。実際の生活でもそうありたいものだ。

プロ弁護士の思考術2007/11/03 17:21

http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4569659365.html
矢部正秋 プロ弁護士の思考術 PHP研究所 2007 を読んだ。人は意識するしないに関わらず常にモノを考えている。この著者は弁護士という職業上の豊富な経験を踏まえてモノの考え方を七つのコンセプト「具体的に考える」「オプションを発想する」「直視する」「共感する」「マサカを取り込む」「主体的に考える」「遠くを見る」に分けて述べている。もちろん普段のビジネスにおいてはこれらを無意識のうちに取り込んで思考している。著者は将棋ファンなのか、ときどき将棋に例えている所は好感が持てる。確かに上のコンセプトは将棋が強くなる、あるいは勝つためのエッセンスをすべて含んでいる。実は著者の示す「考え方の基本」はすべての身の回りのことに当てはまる。

そのなかでも、なるほどと思ったのが「受け売り思考」を徹底的に削るという話だ。人は自分固有の考えを持っていると信じているが実はマスメディアの圧倒的影響を受けている。これは自分自身もよく当てはまる。自分独自の考えを持っている人は非常に少ない。著者がいうには、若い弁護士の意見書を見ると学説や判例を手際よくまとめてあるが、実は自分の考えが入っていない。では自分の頭で主体的に考えるにはどうしたらいいのか。①関連する事実を確認する②自分の判断の「根拠」を吟味する。ビジネスにおいて情報の出所が伝聞やマスメディアの報道だったりすると、これを事実と受け取ることで判断を間違ってしまうケースもある。

会社で新プロジェクトを立ち上げるような場合にも、誰がこういったとか、幹部が賛成したとか、前例主義でこうだとか実質的に何の根拠もないことがまかり通っている場合がなんと多いことか。それで失敗しても合議制の決定事項で誰も責任を取らない。考えるポイントは話し手の肩書や権威をはずして話している内容によってのみ判断することだ。職場では常にロジカル・シンキングが必要と説いているが現実には実践することが難しいものだ。

ジャン・シャルル・ド・フォンブリュヌの本名2007/11/04 23:47

http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4903063119.html
ノストラダムス雑記帳に「志水一夫『トンデモ・ノストラダムス解剖学』へのツッコミ・おまけ」がアップされている。これを読むまで『トンデモ超常レポート傑作選』という本が出ていることすら全く知らなかった。近所の紀伊国屋書店に立ち寄ったところ、1冊置いてあるのを見つけた。今更、と学会の本とも思ったがペラペラめくってみると、ノストラダムスに言及している箇所や今はなき『UFOと宇宙』の裏話などもあったので購入してみた。「6章終末予言レポート世界大予言年表」は、これまでも何度か目にしたが今回改稿したものである。

「おまけ」で突っ込みの入っているフォンブリュヌの本名に関しては年表の3797年の項目にある。確かに「ジャン・ドゥ・ヴィシャール」と読める。ちなみに『AZ』ではこの項自体がなく『予言・予知・占いファイル』117頁では本名の注記は入っていない。まあ本筋に関係ないこともあり、これまで気にかけたこともなかったが今回フォンブリュヌ関連の手元の資料をすべて調べてみた。フォンブリュヌの自著のなかでは本名に関する言及はない。日本語で読める本では『新釈ノストラダムス』と『ノストラダムスの大誤解』に触れられているのみ。手元で確認できる資料としては1976年に出たフォンブリュヌ博士の『ノストラダムスは真実を語った』である。冒頭の父親の伝記は息子のジャンが書いている。

そこには「ツッコミ」にもあるようにMon pere Max PIGEARD de GURBERT(わが父マックス・ピジャール・ド・ギュルベール)とあり、注釈にはピジャール・ド・ギュルベール家の絶えてしまった分家の名前から取った筆名とある。試しにインターネット上で検索してみると系図の詐称というサイトにフォンブリュヌ本人の書き込みがある。そこには本名がJean Pigeard de Gurbert(ジャン・ピジャール・ド・ギュルベール)とある。おそらくこれが正しいのだろう。本人の弁によれば、16世紀から続いている家系図を所有しているので詐称のはずがない。どうしてペンネームにフォンブリュヌを用いたのであろうか。これも推定しうる資料に心当たりがある。

『歴史家、予言者ノストラダムス第二巻』51頁に遠い先祖であるジャン・ルイ・ド・フォンブリュヌの位階、日付は1747年7月7日の国王ルイ十五世の自筆の署名付、がある。こういう文書が残っていることからしてフォンブリュヌ家は世間で有名な名家だったのだろう。それにあやかろうと父マックスがペンネームに用いたのを息子ジャンも倣った。この本には献呈に兄弟の名前が添えられており、画家のフランソワ・ギュルベールの名がある。兄弟のほうは本名のギュルベールを用いていたようである。

定年前後の自分革命2007/11/05 23:50

http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4062720043.html
野末陳平 定年前後の自分革命 講談社+α新書 2000年 を読んだ。先に紹介した『定年病!』の7年前に出た前作である。同じ著者ということもあり、書いてある内容はほぼ一緒である。サラリーマンにとって定年は人生における重大な節目であるというのは様々なエピソードを読むとよくわかる。ただがむしゃらに働いているときには定年後がどういうものかイメージできていないもの。定年後は自由な時間はそれこそ有り余るほど持てるのだがいったい何をすればいいのか、一時的なショックを受けて生き方を見失う人も多いという。今の時代は、例えば60歳定年でリタイアしてもすぐに年金をもらえるわけではない。

先立つものはまずお金である。しかしそれだけではない。いかに会社人間から家庭人間へとリハビリできるかで夫婦の関係もできるだけギクシャクしないよう円満に保てるはずだ。著者の知見を集めて定年後のノウハウを伝えている。ところでこの本は口述筆記で書かれたものと思われる。話の流れか、持ちネタが少ないのか同じ話がいたるところに出ていてくどく感じる。原稿を起こすライターがもう少しその辺をうまく編集したらよかったのに。内容は平易で一気に読めた。そのなかでどこかで読んだ文章テクニックを使っている。かの五島勉氏も用いた一人ボケ-ツッコミがいろんなケースで使われている。

団塊の世代の大量の定年退職を迎える昨今、時間も金も有り余るシニア世代を狙った新ビジネスがいくつも登場するかもしれない。自分が定年になったら何をするか。早めに備えておくことにこしたことはない。