若者と現代宗教2007/11/27 23:44

http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4480058265.html
井上順孝 若者と現代宗教―失われた座標軸 ちくま新書 1999年 を読んだ。現代宗教といえば、まずはなんといってもオウムの事件を思い起こす。この本を読むと若者と現代宗教がどのように関わってきたのか、これまでもやもやとしていたのがすっきりと整理された感じがする。若者の間の「宗教ブーム」が話題になったのは1970年代の後半であるという。ブームがあったかどうかは限定的なアンケート分析によって論じているが、オカルトや超常現象などの非科学的現象に対する関心の深まりとリンクしているのは間違いなさそうだ。この著者は1992年から学生を対象として宗教意識の調査をしており1995年4月から6月の過熱するオウム報道の影響を指摘している。

自分が学生だった当時、サークル活動のノリで大学周辺の街頭でアンケート調査と称し、実際には原理研、モルモン、エホバの証人などが勧誘活動を行っていた。宗教・思想的にまっさらな若者は狙い目なのだろう。そして新興宗教はノストラダムスとの親和性を示すのである。これは五島勉の『ノストラダムスの大予言』の影響が大きい。別のものが出現すれば人類滅亡を防ぐことができる、といった珍妙な解釈に便乗して我こそノストラダムスが予言した救世主であるとした新興宗教が後を絶たなかった。そして勧誘の手口としてノストラダムスなんかも研究しているサークルなどと巧みに引きずり込んだ。興味半分で話を聞きにいったら説法が始まったというケースも多かっただろう。

この著者の定義でいえば自分はノストラダムス第一世代となる。ただそういったものは、はなから怪しいと思っていたので幸いマインドコントロールされることもなかった。大まかな区分として、チャーチが社会や制度や伝統的価値観からいて正統的な位置づけとなり、セクトがそこからの少々逸脱、カルトはもっと逸脱した団体や運動を指すようだ。現在のニュアンスではカルトといえば「危険な新興の宗教運動」という意味に近い。オウムなどはそれが極端な例で破壊的カルトといえる。現在はインターネット社会で宗教のグローバル化も進んでおり、その意味でも様々宗教がてぐすね引いている。でも、今となってはノストラダムスが勧誘の材料に利用されることもないだろう。