ルネサンスの文学2007/11/20 23:59

http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4061598406.html
清水孝純 ルネサンスの文学―遍歴とパノラマ 講談社学術文庫 2007年 をようやく読み終えた。文庫本といっても結構なボリュームがあり一度読んだだけではなかなかルネサンスの全体像をとらえることは難しい。この本では最初に「Ⅰルネサンス文学序説」で広大な海を漂うルネサンス文学全体のあらましを示す。そこには中世文学からルネサンス文学への移行に際して、何が引き継がれて何が新しいところか。その新しいエッセンスはいかなる背景のもので出来上がったものなのか、そんなことをまとめている。

「Ⅱルネサンス文学の世界」ではいよいよ各論に入っていく。有名な14の作品の注釈と内容のダイジェスト版で初めて読んだ作品も半分以上あった。内容は今から400年以上も前とは思えないほど古くて新しい、その発想は結構現代人の感覚に近いという印象を受けた。それこそ話の本質自体は今日のドラマや漫画の素材に十分になり得る。たとえばセルバンテスの『ドン・キホーテ』は本来騎士物語のパロディなのだが「現実世界を再現しようとしているのではなく、新たな世界を創造しようとしている」ものだ。予言詩がなんでもベスビオ火山に見えてしまう池田邦吉氏のノストラダムス論を思い出してしまった。

他の作品についてもいろいろ新たな刺激を受ける部分が多い。最後に置かれているモンテーニュの『エセー』は今日でいえばブログのような感じか。エセーはエッセー(随筆)の語源となった言葉だ。本来の意味は「判断力を試みる」だがその背後には理性への不信があるという。この見方は十分現代でも通用する。幸い手元には宮下史朗氏による新訳がある。この機会にもう一度読み直してみたい。