ポール・クーデールの占星術2010/01/09 23:35

ノストラダムスの予言に懐疑的な立場で書かれた本は、第一次ブーム当時から少しずつ出版されてきた。その言及は部分的なものが大半であった。なかでも推理作家の高木彬光氏の著作は、関連性の薄い日本の予言者二人に相当のの分量を割いているとはいえ、資料の乏しかった当時としては渾身の力作だった。まるまんま一冊の本で懐疑的な立場から批判を行ったもので有名なのが、ジェームズ・ランディの『ノストラダムスの仮面』であろう。第四次ブームではその邦訳『ノストラダムスの大誤解』が出版されたこともあり、懐疑的な論評する人の必須文献になっている。第一次ブーム以前の文献で、手許にポール・クーデールの『占星術』(1973年初版、1981年、文庫クセジュ)がある。この本は占星術の批判書であるが、そのなかで一部ノストラダムスに矛先を向けている。

原書はCollection QUE SAIS-JE ? No158、1951年初版。邦訳の138頁を開くと、実質2頁ほどノストラダムスへの言及がある。「彼のさまざまな予言は、たいていの場合、正確にどんな意味があるのか迷うようなしろもので、いずれにせよ、それが予告していると思われる出来事には、いつ起こるという保証がないのである。」その一例として、百詩篇2-41を引用している。「大いなる星、七日にわたりて輝かん、雲より二つの太陽現れ出でん。大いなる犬、夜を徹して吠えん、大司祭の土地を変うるとき。」1947年に刊行された本から現代的解釈を紹介している。大いなる星とはムッソリーニ、二つの太陽とはヒトラーとムッソリーニ、吠える犬はムッソリーニ、大司祭はルーズベルト。クーデールが特にセレクトしただけあって、飛び切りひどい解釈である。最初ロバーツの本かと調べてみたが、1939年ピウス十二世の頃とあるだけで内容は一致していない。

ずっと疑問に思っていたが、M.P.EDOUARDが1947年にパリで出版した"Text original des propheties de Michel Nostradamus de 1600 a 1948 et de 1948 a l'an 2000"(ミシェル・ノストラダムスの予言集のテクスト原典、1600年から1948年および1948年から2000年まで)の31頁にクーデールが引用したのと同じ注釈を見つけた。エドゥアールの本の「近過去1933-1947」の章では、この詩のみならず何でもヒトラーやムッソリーニに結び付けている。ざっと見ても、その後の解釈本に引き継がれたものはなさそうだ。クーデールが「こんなばかばかしい話」というのもわかるような気がする。