「狂い」のすすめ2009/12/21 23:37

http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4087203778.html
ひろ さちや 「狂い」のすすめ 集英社新書 2007年1月 を読んだ。タイトルだけ見ると、「狂い」なんていう刺激的な言葉が紛れ込んでおり、いったいどんな内容なのかと興味をそそられる。著者のひろ氏は仏教を中心とした宗教や哲学を説いた本を400冊以上も世に出している。この本もある意味逆説的な処世術を説いた内容だ。弱者にとって思想・哲学が苦しみの現実と闘う武器になるからだという。「ただ狂え」の哲学とはなんぞや。人生は夢なのだから、くそ真面目に生きるなんていう自己拘束をやめにしましょう、そんな哲学という。ある意味非常にユニークな見方で面白い。要はあまり肩ひじ張らず、世間の常識を信用するすることなく自由人となりましょう、と。

そのためには自分が弱者だと自覚する。そうすれば自分独自の思想・哲学が持てる、そう主張している。その考え方は何となく共感できるところもある。自分の頭でモノを考えて判断するためには周りを取り囲んでいる常識に遠慮することなく打破する必要がある。日本の企業でも社員の人格までを管理して奴隷と化す傾向が多かれ少なかれある。それこそが狂った社会なのである。それに対抗するには自分が「狂う」以外に自由人になることはできない、そう説いている。では自分が「狂う」にはどうすればよいのだろうか。ひろ氏は各章の終りにユニークなメッセージを送る。「目的意識を持つな!」「「生き甲斐」は不要」「「現在」を楽しむ」「希望を持つな!」「人を裁くな!」「大根役者になるな!」・・・

ところで、この本ではモームの『人間の絆』のなかで、「人間の歴史」を知りたいと思った東方のある国王のエピソードを紹介している。国王が学者に銘じて人間の歴史を書いた500巻の書物を集めたが、それをどんどん要約していき、最後は賢者は1行にして申し上げた。―人は、生れ、苦しみ、そして死ぬ―。この挿話はどこかで読んだことがことがあると思ったら、少し前に紹介した『いい人生の生き方』に似たような話があった。思想・哲学を語る場合には定番のネタであるようだ。