将棋世界6月号を読んで2008/05/05 23:58

只今ゴールデンウィークの真っ只中。といっても暦の上での休みは明日で終わり。土曜日から出掛けていたのでブログの更新は滞っていたが、なぜか通常時よりアクセス数が増えていた。覘いていただいた方には申し訳ない。移動時間に今月号の将棋世界をじっくり読んだ。最近の読み物は随分と充実している。巻頭の千駄ヶ谷市場のマイナビ女子オープン第一局と名人戦第一局の観戦記(どこにもそういう表現はないが)は秀逸な読み物で、先崎の著述家としての才能がいかんなく発揮されている。最近はインターネット中継が当たり前になって、棋譜やら対局の状況などはリアルタイムで報じられる。どうしたって月刊誌は後追いになってしまい、プラスアルファの新鮮味を出すのは厳しい。

先崎はプロ棋士であるから棋譜の解説などはそんなに難しいことではない。しかし対象となる読者は一般の将棋ファンなのである。いかに対局者と棋譜に肉づけをするか。その大一番の背景はどうか、対局者心理の本音はどうなのか、控え室での反応はどうだったか。これらの素材を元に鑑賞に値する作品を仕上げるのはそうたやすいことではない。女流棋界の最高棋戦を当たり障りなく解説するのは簡単である。先崎は一歩踏み込んで女流が男性と同じ土俵に上がれるよう、厳しくも人間味のある一味違った書き方をしている。名人戦のほうは急所の局面の考え方をわかりやすく噛み砕いている。個別の手の意味よりも一局の流れを大事にしているのでアマチュアでも理解しやすいと思う。

今月の目玉企画「最強羽生世代に揺らぎは見えたのか?」は渡辺のコメントが冴えていて面白い。しかし、こうした月刊誌に載せる本音トークは読者には受けるだろうが、棋士仲間ではよく思っていない人も多いはずと、ちょっと心配になる。本来順位戦でも早く上がってくれよと認められているはずが、出る杭は打たれるで、前期はああいう結果になったのではないか。もっともそれを跳ね返す実力をつければ、さらに一皮むけてくれるはずだ。早く羽生との顔合わせが見たいものである。