組織行動の「まずい!!」学2008/04/20 14:19

http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4396110448.html
樋口晴彦 組織行動の「まずい!!」学―どうして失敗が繰り返されるのか 祥伝社 2006年 を読んだ。最近は企業の不祥事の応対で経営者が記者会見する映像が流されることが多い。経営者としてはどうしても会社を守ろうとするから素直にミスを認めたがらない。自分の責任逃れのために、担当者のせいにすることで本当の原因を隠蔽したくなるものらしい。テレビの画面では都合よく編集されて繰り返し放送されることで企業のイメージが損なわれ、大きな痛手を被ることも少なくない。そこでコンプライアンス(法令遵守)やCSR(企業の社会的責任)などトップマネジメントに置く企業が増えた。しかしながら、いくら文書規定類を整備して立派な組織図を作ったとしても実際の現場で働く人の意識改革がなされなければ絵に描いた餅に過ぎない。

本書はリスクマネジメントを組織内の「失敗学」という観点から、人はなぜミスを犯すのか、失敗の原因を分析し、対策として何をなすべきなのか、豊富な事例と経験に基づいて紹介している。人がミスを犯す要因はどこにあるのか。ヒューマン・エラーを誘発する職場環境、ベテランだからこそ事故を起こす、グループシンクによるエラー。グループシンクとは「凝集性が高い集団において、集団内の合意を得ようとするあまり、意志決定が非合理的な方向に歪められてしまう現象」で、集団の実力に対する過大評価、集団独自の道徳の押し付け、外部の意見に対するステレオタイプの反応、主流と異なる意見に対する自己検閲、満場一致を求めるプレッシャーなどがその徴候として挙げられるという。どこのグループでもよく目にするような事象でこうした危険性にも注意を向けるべきだ。

2章「危機意識の不在」と3章「行き過ぎた効率化」では実際の事例に基づいて失敗する要因を明らかにしている。昨今企業経営はさらに厳しくなりコスト削減が声高らかに叫ばれているが、度が過ぎると安全性を食いつぶしているケースも多い。性急な成果主義の導入は個人のモチベーションを下げてしまい組織を蝕むことになりかねない。効率化を図るOAの導入は本体主役であるはずの人間がコンピュータの僕と化す危険性を孕んでいる。なるほど身近にありがちなことばかりだ。ではどうやって緊急時に備えリスク管理をしていくべきか。それは4章と5章に書かれている。本書は今日の社会情勢にうまくフィットして参考になる点も多い。けれども過去の経験則は未来永劫当てはまるわけではない。その時々の情勢に応じて情報収集し、叡智を振り絞った「対応力」がますます必要になろう。