最近読んだビジネス書2冊2008/11/09 23:02

http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4759813047.html
中田亨 ヒューマンエラーを防ぐ知恵―ミスはなくなるか 化学同人 2007年 を読んだ。現代の科学技術は様々な事故例を想定したセキュリティーを構築している。株売買の事務処理だって本来事故が起こらないようなシステムを構築している。ところがヒトのやることには必ず思いもよらないミスがつきものである。本書はいろいろなヒューマンエラーを具体的に挙げ、その分析と対処を解説している。さらにまとめとして一般的な教訓を与えてくれる。身近なところでも仕事上の事務処理のエラー、コミュニケーションのエラー、現場でのエラー、経営判断のエラーなどいたる所にヒューマンエラーが存在している。この本で分類されているエラーのパターンを現実に照らすと、いろいろと考えさせられることが多い。ヒューマンエラーを出さないような「知恵」は絞り出すものなのだ。

http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4569635415.html
田中和彦 複職時代―「不安定な現代」の働き方 PHPエル新書 2004年 を読んだ。人は何らかの仕事をして生活の糧としているが、各人には多かれ少なかれドラマが隠されている。この本は仕事の転機に直面した人たちの成功例や失敗例を93編のショートストーリにまとめている。人が人生の中で経験しうることは限定されている。本書はいろいろな生き方の選択肢を示してくれるし、身近でも起こり得るリアリティのあるものも含まれている。昨今のニュースを見ると、世界的な不景気の波に飲み込まれて業績が悪化している大企業も多く、切迫した状況に置かれた人々がいる。そうした時にいかに自分に合った仕事を見つけていくか、参考となる指針を与えてくれるはずだ。いいなと思ったのが、『 夢の中で「ありがとう」』という話。夢の中にあらわれた亡くなった奥さんに初めて感謝の気持ちを伝えるというもの。ちょっとジーンとなった。

最近のビジネス書を二冊読んだ2008/10/13 23:38

今年出版された新書版のビジネス書を2冊読んだ。この手のハウツー本は本屋の棚をのぞくと次から次へと出版されている。読者に手に取ってもらうにはテーマの魅力もそうだが、いかにしてぐっと引きつける題名を持ってくるかにかかっている。

http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4121502833.html
樋口裕一 「人間通」の付き合い術―好印象に導くしぐさと話し方 中公新書ラクレ 2008年。
副題はいたって平凡だが本の内容をそのまま表している。いろんなケースの対人関係での適切なコミュニケーションの取り方を指南してくれる。それぞれのケーススタディは思わず笑ってしまうのもあるが、「なるほど!」と参考になる部分も多い。ところで、表題の「人間通」というのがちょっと目新しい。本を書いたのがどのような人間かを強調している。この本の内容は著者の実際の経験というよりは鋭い人間観察によって取りまとめた事例を基にしている。普段からよく人間を見るというスタンスが「人間通」の極意なのだろう。

http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4582854168.html
大宮知信 ひとりビジネス―転身・独立で幸せをつかむ 平凡社新書 2008年。
こちらは組織や人間関係の束縛から解放された、一人親方でニッチな分野のビジネスを切り開いていった人たち20名のライフスタイルと起業術を取材したもの。世の中にはニッチな分野に様々な潜在的ニーズが内在しており、実にバラエティーに富んだビジネスプランがあると感心する。昨今のリストラや企業の倒産、年金に不安を抱える定年退職後など「寄らば大樹の陰」では生活していくのはおぼつかない。著者はそのひとつの選択肢としてひとりビジネスの世界をわかりやすく紹介してくれる。会社勤めに見切りをつけて自分の好きな分野で誰にも拘束されることなく幸せに仕事をこなしていくのは理想である。それに収入が伴えば言うことはないのだが、やはり現実は厳しいようだ。そのあたりの気になる所も行き届いているので、ひとりビジネスを考えている人には大いに参考となる本である。

ビジネスマン、出世の原理・原則2008/09/22 23:43

http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4309406122.html
山田智彦 ビジネスマン、出世の原理・原則 河出文庫 2000年 を読んだ。文庫本で250頁の薄い本なのであっという間に読み飛ばした。ビジネスマンなら思わず手に取ってしまいそうななんとも魅惑的なタイトルである。どんなすごいことが書かれているかと思えば、著者の会社生活の経験をもとに時折戦国時代のエピソードを交えながらいかにスマートに仕事を進めるか指南をしている。内容はどこかで読んだことのあるごく一般的な話である。もともとのオリジナルは1992年に出版された単行本であるから16年も経っている。多少内容が古くなっているのはしょうがない。解説にもあるようにこの本は出世のためのノウハウ本ではない。「すべての人が自分の居場所を快適にできる方法」をわかりやすく、会社生活を例に挙げながらアドバイスを与えてくれる。

参考になったのは8章の「ライフワークの効用」。仕事の内容とはまったく関係のない分野にライフワークを持つか、業務の延長線上にライフワークを持つか二つの方法を提示する。自分は欲張りなので両方での目標を持ちたいと思っている。このブログもその一環といえるかもしれない。さらに9章の「時間活用ができない男は出世できない」も参考になる。著者の通勤時間3時間というのはまったく同じ境遇なので1日24時間のなかでいかに自分の時間を作るかは非常に大切である。通勤時間を有効活用するというのはまったく同感で、自分もできるだけ読書に充てている。そして12章の「ビジネスに磨きをかける読書術」。基本的には一度読んだ本は読み返すことは少ないがこの著者は再読、三読を奨める。何年かして読んでみるのは確かに新たな感じ方が加わるかもしれない。

実用書としては十分及第点を与えられる。が、姉川氏が解説で書いているように、この本を読んだからといって、すぐに仕事がしたくなる―というのは根が怠惰な自分には全くあてはまらなかった・・・

食い逃げされてもバイトは雇うな―禁じられた数字〈上〉2008/09/11 23:57

http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4334034004.html
山田真哉 食い逃げされてもバイトは雇うな―禁じられた数字〈上〉 光文社新書 2007年 を読んだ。なかなかユニークなタイトルである。これだけをゆっくりと読んでみてもおぼろげながら全体の内容が浮かんでくる。要は経営者の立場になって考えると、食い逃げの分とバイト料のトータル金額を比較したとき、どちらがキャッシュが残るかという判断である。そう思って読み進めてみると、まず数字の話が出てくる。なるほどビジネスにおいて会社の決算には多くの数字が出てくる。その数字が意味するところをいかに読み取るか。イントロには数字のルール、1章には数字がうまくなるための技法、2章でビジネスの数字がうまくなる、と数字の扱い方について単純な例に引き合いに出して解き明かす。

そして3章でいよいよ本題のテーマに入る。会計の数字がうまくなる方法を指南してくれる。そう、この本は「数字&会計の入門書」なのである。著者は公認会計士というから企業の決算書の数字のカラクリを熟知している。しかし一般の人々はどうも数字の羅列ばかりで苦手意識を持ってしまう。そこを見透かしているかのように非常にわかりやすく平易な言葉で、しかも行間が広く、大きな字で組まれている。それで値段が700円か。本文にもあるように読みやすさを優先したようだ。確かに新書で219頁といっても内容的には1時間程度で読める。お金の出入りはほんとうに複雑である。しかしその本質的なところは決算書から数字を探し過去や他社と比較することで問題点を浮き彫りにする。

この本を読んで多少は自身の数字アレルギーが解消されたかもしれない。話を単純化するというのは簡単そうに見えて実は難しいものだ。下巻もあるとのことで機会があれば読んでみようかと思う。

「創刊男」の仕事術2008/07/21 23:52

http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4532310490.html
くらたまなぶ MBAコースでは教えない「創刊男」の仕事術 日本経済新聞社 2003年 を読んだ。くらた氏はリクルートで実に14もの事業を立ち上げて儲かるビジネスを生み出した。その実戦的なノウハウを他の分野にも応用ができるように一般化してレクチャーしてくれる。もちろんビジネス書として優れているが読み物としても抜群に面白い。リクルートといえば学生のとき就職情報でお世話になったイメージが強い。最近では「とらばーゆ」「フロム・エー」「エイビーロード」「じゃらん」「ゼクシィ」など聞き覚えのある情報誌も多い。それらがどのように生み出されたのか、あえて無理やり恋愛に例えているのがわかりやすい。

ヒットする商品を手掛けるためにはやるべきことは共通している。著者のマーケティングは自ら血のにじむような経験に裏打ちされたもので大いに納得させられる。まずは身近な所から人の話を聞きまくり、普段の生活の中で「不」のつくものを見つけ出す。そうした耳情報を集めてひたすらブレスト(ブレーンストーミング)を行い、脳味噌を絞って夢を描く。それをわかりやすい言葉でまとめてマーケットでのターゲットと採算性を検証する。わかりやすくいえば「国語」から「算数」に移行する時期に当たる。そしてトップへのプレゼンテーションを経て新事業の立ち上げへと向かう。自分で見たり聞いたりして考え抜いた理想のビジネスモデルをいかにして現実のソロバンとの擦り合わせられるか。

その手腕たるや、まさに創刊男の面目躍如といえる。これほどまで新規事業を立ち上げた、くらた氏の実践的な起業術は様々な分野に応用が利くものばかりである。だからこそこの本はよく売れたのだろう。紀伊国屋のブックウェブを見ると品切れで入手不能とあった。残念である。