ランディのノストラダムス本の仏語訳2008/11/08 22:55

海外のノストラダムス本で主にチェックしているのは英語、仏語、独語のもので、あとは西語と伊語の本がわずかに手元にあるくらい。その中には翻訳された解説書も少なくない。残念ながら日本語で書かれた解説書の翻訳は存在しない。英語で書かれたノストラダムス本のなかで仏語に翻訳されたひとつにジェームズ・ランディの著作がある。ランディの原書は1990年にニューヨークで出版された"The Mask of Nostradamus: the prophecies of world's most famous seer"(ノストラダムスの仮面、世界一有名な占い師の予言」)である。竹下節子氏の『ノストラダムスの生涯』にも参考文献として挙げられている。その仏語版が手元に届いた。タイトルは"Le Vrai Visage de Nostradamus"(ノストラダムスの真実の顔)で1993年の刊行である。

本の内容から判断すると仏語版のほうがタイトルとして適切のような感じがする。もっともmaskとは「覆い隠されたもの」で婉曲な謂いである。原書の著作権表示を見ると1993年に改訂されているようだが手元には1990年初版しかない。この本はビリーバー・キラーの決定版として、1999年に日本でも『ノストラダムスの大誤解―イカサマまみれの伝説43の真相』として第四次ブームの際に出版された。仏語版をざっと眺めると使用されている図版が原書と一致していない。転用しているのもあるが、モンペリエ大学の医学部図書館から入学宣誓書のコピーしたり、サンレミの観光事務所から、予言詩に描写されているサンレミの風景を掲載している。届いた本はところどころ青鉛筆で線が引かれていて、元の所有者が注目した箇所がわかり興味深い。

久し振りに邦訳を取り出して仏語版と比較してみると、内容はほぼ忠実に原書に準じて訳されている。ただし、邦訳は章構成を変更、9章の「時代の魔術師たち」がカットされて、1999年の予言詩の解説が追加になっている。補遺にある「1555年初版に関する文書」や「世界の終りに関する外れた予言」は邦訳には見られない。ランディの本はブランダムールより前なので古い情報や誤った記述も見られる。なんといってもノストラダムスの予言能力を完全に否定することを念頭に書かれたため、信奉者をめった切りしている。しかし予言能力に懐疑的なブライラーやレオニでさえ、「ノストラダムスは機知に富み、詩人としてかなりのレベルに達していると評価している」にもかかわらず、真っ向から反対しているのは、懐疑のバイアスがかかりすぎている気がしてならない。