ノストラダムスの失われた四行詩2008/11/04 22:02

http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htmy/0615193528.html
海外ではいまだにノストラダムス本が出版されている。1999年の予言もすっかり過去の出来事になり、イアン・ウィルソンの著作のような最新の研究成果が盛り込まれた伝記も現れている。そしてインターネット上には関連文献データがあふれている。そんな中でノストラダムスというありきたりな素材で一冊の本の書くのは大変なことだ。最近、Sirianusが翻訳、注釈した"The Lost Quatrains of Nostradamus"(ノストラダムスの失われた四行詩)を入手した。この本は2008年2月に刊行された新刊書で紀伊国屋のブックウェブにも本の紹介が載っている。ノストラダムス・チャネラーであるシリアヌスが新たに発見され解釈された四行詩を取り上げるという。

チャネラーといえばドロレス・キャノンの『ノストラダムスとの対話』全三巻(邦訳『ノストラダムス霊界大予言』)を思い起こす。届いた本を見ると、裏表紙にシリアヌスの心霊写真のような妖しげな写真が載っている。ページをめくると、章タイトルとともに四角で囲まれた四行詩が最初に来て解説と解釈が続く。予言集のオリジナルの詩を取り上げるときには仏語原文をイラスト付で掲げている。原詩に対しては1行1行丁寧に注釈を付けている。現代の事件に照準を当てた予言解釈は斬新であるがコジツケをもっともらしく繕ったものだ。例えば、百詩篇10-29に「ポール・マンソルの山羊のほら穴で、(彼は)隠れて、捕らえられ、髭によって引き出される」とある。

もちろんシリアヌスは1行目をノストラダムスの生誕地サンレミ・ド・プロバンスにあるサンポールモゾル(古代ローマの霊廟)と読むのは知っている。ところが、ポールをpoli(微かな光)マンソルをManとsolに分けてそれぞれmanant(無作法な男)、sol(土の)と読み、cauerne(ほら穴)と併せて防空壕と翻訳する。すると、2003年12月に人工の穴のなかに隠れていたサダム・フセインが浮かび上がってくる。他の翻訳もみなこんな感じだ。もっとも、この本の冒頭に出版社の免責事項として注意書きが置かれている。「この本はパロディであり完全に作り話である。風刺目的以外で実在の人物に似ているところはどれも偶然にすぎない」。ノストラダムスのこんな料理方法があるとは面白い。