ウーリッヒ・ド・マイヤンスの研究書2008/11/15 23:38

第二次ノストラダムスブームの1980年代には予言に関する単行本が数多く現れている。その中でも二見書房では「フタミの予言書シリーズ」と銘打って様々なノストラダムス関連書が出版された。占星学者の流智明氏、医学博士の川尻徹氏ら日本人の著者から、欧米の予言関連書の翻訳など幅広く手掛けている。1984年、ミッシェル・ド・ロワザンの"La Bible de l'an 2000"(2000年の聖書)が吉野博高氏訳で『悪魔の啓示 最後の審判』という題名で出版された。(3年後に『ノストラダムスに伝承された地獄絵がいま甦る!』と改題されている)秘密結社エクレシア教団の創始者ウーリッヒ・ド・マイヤンスの記した予言書『奇蹟の樹』について書かれたものである。

ウーリッヒがノストラダムスの師であったとしていくつか興味深い記述も見られる。かつてセルジュ・ユタンが著書の中で1964年のロワザンの「ウーリッヒ・ド・マイヤンス」という記事に言及していた。ウーリッヒとノストラダムスの関係については一般の伝記でほとんど言及されることがない。原書を入手してみたが邦訳とはかなり印象が異なる。大判で500頁もある大著で専門的な記述が満載で、邦訳にある人類滅亡のシナリオなどは載っていない。そもそも原著が1979年の発行であるのに1981年に起きた危機的な事件が書かれていること自体がおかしい。(邦訳236頁など)原書で取り上げられていない四行詩を占星術的に解釈し、核戦争の危機を煽ったりしている。

『ノストラダムスの遺言書』とは異なり、本書では原書を勝手に書き換えたとはどこにも記されていない。異常気象や軍事力の増強により人類滅亡に進んでいるという論調は、どうも流氏が付け加えたとしか思えない。そのスタンスは流氏の著作『惑星大予言Ⅱ審判の日』に非常に近い。原書があまりにも専門的で歴史的記述が多いためそのまま訳出したのでは予言書としてインパクトが弱い。そのため身近な危機のニュースを取り込んで人類滅亡をクローズアップするように書き換えたのではないだろうか。二見の邦訳でもって原著書の評価するのは適切ではないことが改めてわかった。