第67期名人戦は羽生が勝って3-3、最終局へ2009/06/16 22:34

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後のない剣が峰で羽生が終盤の一瞬の切れ味を見せつけた一局であった。上図は▲8五桂の王手に△7二玉と引いたところ。ここで思い切りよく▲6五飛と切って桂馬を手駒にしたのが決め手か。以下△同銀なら▲8四桂と打って△7一玉▲5二銀で寄り筋。よって後手は飛車を取らずに△8六桂と詰めろをかけて下駄を預ける。以下▲7三銀△同銀▲同桂成△同玉▲8五桂、ここで△8三玉と逃げたために最後は鮮やかな即詰みに打ちとった。ずっとバランスが保たれた難しい局面が続いていたように思われたが疾風の寄せが決まった感じだ。するとその前の△6九角がどうか。玉の早逃げで△8二玉としたほうが粘れたかもしれない。見ていてハラハラドキドキする終盤戦の醍醐味を堪能できた。

封じ手は予想した通り▲3七桂。△4四銀に対する▲4六歩から1歩を持つのはちょっと意外な展開だった。ここでは穴熊への組み替えはできなかったのだろうか。もっとも羽生は第五局のように穴熊に組み替えたがいいが手詰まり模様を嫌ったか、あるいはその瞬間に後手から動かれるのが気になったのか。この辺りの羽生の読みは興味のあるところである。先手の矢倉のほうが固いかと思ったが6筋に位を取られているのと8筋に歩が利くので実はそれほどでもないのかもしれない。しかし後手陣は囲いの形になっておらず薄いことこの上ない。後手側から見るといわゆる勝ちづらい将棋の典型ではないかと思えたのだが、郷田は自らの読みを信じて敢えてこのままで攻め合いに持ち込んだ・・・

これで名人戦は最終局にもつれこんだ。次は泣いても笑っても決着がついてしまう。今シリーズは羽生と郷田の読みの波長が合うのか、力のこもった均衡のとれた将棋が続いている。最終局もその集大成を見せてもらいたいものだ。