名人戦第六局は郷田意表の陽動振り飛車に2009/06/15 21:49

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郷田が3-2と初の名人位奪取に王手をかけた名人戦第六局の一日目が終了した。郷田からすればこの一局を勝てばとの必勝態勢で臨みたいところだ。対して百戦錬磨の羽生はカド番とはいえこれまで通り自然体で対局に向うことだろう。こうした心理戦もタイトル戦の後半では見どころとなる。羽生は予想通り序盤は矢倉を目指す。もっとも得意とする戦法であるし郷田に対して勝率が抜群であるからごく自然な展開である。対して郷田はがっちりとした相矢倉を避けて陽動振り飛車の作戦を選んだ。これはどういった意図があるのだろう。羽生が矢倉を目指すのはかなり高い確率で予想できる。羽生に対して相矢倉では分が悪かったが第2局に後手番で勝利したことで一つ課題をクリアした。

先手矢倉に対する回答として急戦矢倉に脚光が当たっているが、もうひとつ陽動振り飛車も升田九段の愛用した対抗策である。郷田があと一つ余裕のある状況であえてこの戦法を選んだのは事前研究と羽生の意表を突くためではないか。現代では陽動振り飛車に対して居飛車穴熊に囲う戦術が発達しており、振り飛車側の苦戦が明らかになっている。そこを敢えて踏み込んだ郷田に何か秘策はあるのだろうか。封じ手までの序盤を見る限りどこに後手の工夫があるかまだわからない。もちろん大長考のなかではすでに幾多の局面で戦いが始まっている。この戦法を指す上でのポイントはいかに居飛車穴熊に組ませないかにある。序盤の△8四歩を生かして銀冠に組む指し方も多いが、そうすると居飛車も万全に玉を固めることができる。

封じ手の局面は、先手玉が後手の角の直射に入って気持ち悪いところ。ここで香車を上がるのは△8五桂と跳ねる手が気になる。直感的には▲3七桂と跳ねて後手の4五に伸びた歩を狙ってみたい。これに対し△4四銀なら一旦▲1六歩と端を突いておき、△1四歩と受けてくれれば▲9八香と囲ってみたい。明日はどういった展開になるか楽しみである。