第80期棋聖戦第一局は羽生が後手急戦矢倉で1勝目2009/06/09 23:35

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棋聖戦第一局は充実したネット中継が行われる。梅田氏のリアルタイム観戦記の第三弾もある。しかしながら生憎日中は仕事もありパソコンの前で観戦するわけにはいかない。帰宅して朝日のウェブでニュースを眺めていたらすでに羽生勝ちの速報が入っていた。早速上のサイトにアクセスし、まずは棋譜と解説に目を通してみた。その後棋譜をkifu for Windowsに登録し今度は全体の流れを見るべく並べてみる。将棋の内容が大体頭に入ったところで梅田氏の観戦記を読んだ。相変わらずいろんなネタを仕込んで短時間のなかで上手に料理している。しかし将棋の内容は終盤のねじり合いにはならず木村の完敗。やはり将棋の内容が盛り上がらないと観戦記のいい素材に成り得ない。

将棋のほうは木村先手で後手の羽生が矢倉を受けた。がっちりした相矢倉にはならず先の竜王戦第七局で渡辺の指した新手△5五歩からの歩交換から△3三銀と上がる形を選択する。ひょっとすると羽生は梅田氏のリアルタイム観戦記を意識して、豊富なバックグランドのある戦法を採用したのではないか。羽生は先手を持って経験済みだし、木村も『将棋世界』3月号の「これで矢倉は指せる」で解説している。果たして3月号の156頁「私見では、手順中の▲7九角で▲5七銀上(L図)はあったと思う」、驚くことにこの研究が本局にそのまま出現した。羽生は5筋、6筋の位取りを許したが48手目△1二香と上がり渡辺流の穴熊に囲う。たぶん模様からすれば先手が若干指しやすいのだろうが、持ち時間が短く秒読み勝負になれば実戦的には後手が勝ちやすいか。

上図の93手目▲9七玉で木村ワールド突入であるが、後は幾ばくもなく先手の投了となった。木村の感性は普通のプロ棋士とはちょっと異質な感じがする。その感性でもってこれまで7割近い勝率を挙げてきたのだが、本局は後手が一方的に攻める形になり「千駄ヶ谷の受け師」の力を持ってしても受け切れなかった。事前の木村のインタビューにあった、まずは1勝が目標というのも次局以降に持ち越しとなった。次は木村の後手番なので一手損角換わりが有力である。