フランスのノストラダムス本の新刊2008/11/12 23:35

ノストラダムスの予言集はその時代で非日常的な出来事が起こるときブームの波が訪れる傾向がある。特に戦争と予言解釈は極めて親和性が強い。予言テクストは普通に読めば16世紀の政治力学のもとで解釈されるものが多い。ところが恣意的になんらかの解読のキーを与えてやることで、予言テクストが自分の属する時代の事件と結びつくのを可能とする。あるいは先行き不透明な未来を渇望する人々の幻想を引き起こす。ある意味ノストラダムス予言集が今日まで読み継がれてきた理由は、予言テクスト自体の適度な曖昧さに優れているからに他ならない。予言がそれを読む人と同時代に相似的に反映し得るのは、テクストが豊潤なイメージを喚起させる役割を担っているからであろう。

注文していた"Nostradamus s'en va-t-en guerre 1914-1918"(ノストラダムス、1914-1918年の戦争に出かける)が届いた。本の最後の頁を見ると2008年9月とある。出版されてまもない新刊である。著者はJean-Yves Le Naour、裏表紙の紹介によると現代史の博士号を持つ。専門分野は第一次世界大戦と二度の戦争の間とある。ル・ナオールは歴史家にあまりよく知られていない当時の時代をポップ・カルチャーとして解釈する。そうして第一次世界大戦を理解するための新しいアプローチを提唱している。ざっと目を通してみても特に予言詩のテクストが引用されているわけではない。

3章「予言の高まり」では戦時中に発表された予言書について論じている。注記にはシャルル・ニクロー、ドマール・ラトゥール、コリン・ド・ラモール、アルベルト・ニーフらのノストラダムス解説書が挙げられている。本の中身はこれからじっくり見ていきたい。