百詩篇9-20とフランス街道案内2009/07/29 23:29

ノストラダムスRGのメーリングリストを読んで、ノストラダムスに関するある論文がネット上で公開されているのを知った。以前から少し気になってはいたが未見だったので早速ダウンロードしてみた。タイトルは"Les prophéties de Nostradamus : suivez la guide "(道案内に沿ったノストラダムスの予言群)でChantal Liaroutzosが1986年に発表したもので「人文主義、(宗教)改革、ルネサンスに関わる研究会紀要」23巻の35-40頁にあたる。ノストラダムス予言集の百詩篇9-20の四行詩は、これまでルイ十六世一家の国外逃亡の際にヴァレンヌで捕らえられた事件を明確に予言したと評されている。1806年のテオドール・ブーイの著書57頁以下にある注釈がベースとなって後の研究家たちにずっと受け継がれてきた。(この著書もネット上で読むことができる。)

自分も本当にこの四行詩が一語一句違わずに予言されているのかどうか随分と調べたことがある。その一部は以前HPにも書いた。その後、岩波の『ノストラダムス 予言集』の附録の章の320頁でヴァレンヌの詩の新解釈が紹介された。実はノストラダムスと同時代に刊行されたシャルル・エチエンヌの『フランス街道案内』に見られる地名の列挙にすぎないという。その元ネタになった論文がコレなのである。もっとも岩波の参考文献では1998年の再版を挙げている。確かに実証的な解釈として説得力に富んでいる。その前にもこの解釈は仏語の注釈書で読んだ記憶があるがすぐに思い出せない。ロジャー・プレヴォの『ノストラダムス、神話と現実』24頁以下にもこの話は載っているが、これではないような気がする。

この詩は哲学者のデュメジルが1984年にその名もズバリ『・・・灰色を着たヴァレンヌの黒い修道士』という本で類似性を指摘していた。もっとも副題の「ノストラダムスの茶番劇」のようにとりたてて予言能力に感動したわけではない。志水氏によると、その抜粋が『ダカーポ』で紹介されたこともあったという。まだ詳しくは読んでいないが、興味のある方はこの新解釈のルーツをご自分の目で確かめてみてはいかが。
http://www.persee.fr/web/revues/home/prescript/article/rhren_0181-6799_1986_num_23_1_1536