チャップ・ブックの世界2007/09/03 22:12

http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4061598287.html
小林章夫 チャップ・ブックの世界―近代イギリス庶民と廉価本 講談社学術文庫 2007年 を読み終えた。この本は1988年駸々堂出版より刊行されたのを四分の一ほど削って文庫化したものである。今までは主にフランスを舞台とした書物関連の本を読んだことがあるがイギリスに特化した書物をテーマにしたものは初めてである。チャップ・ブックとはおもに18世紀から19世紀初のイギリスで行商人が日用品と一緒に売りさばいた廉価本をいう。その内容は庶民向けの娯楽というべく占い、予言、説教、犯罪、名作のダイジェストなど今日のタブロイド紙の様相を呈している。

フランスでも17世紀の初め頃から行商人が主に都市部で訪問販売していた質の悪い廉価本が出現していた。トロワの印刷業者などは短期的な利益を得ることを目的としていたため好評だった暦を使い回しして印刷していた。そこにノストラダムスの名前も頻繁に利用された。以前当ブログで紹介したトマス・ジョセフ・ムルトの予言集などはその最たるものだ。ベナズラの書誌をペラペラとめくるとやはり18世紀の中ごろにはフランスでも万年暦占いの形で出版されている。イギリスのチャップ・ブックと異なるのはページ数が96頁と結構分量があることだ。イギリスのものは当初新書版、後年は文庫本くらいの大きさで24頁程度の小冊子だった。

チャップ・ブックは紙の質も悪く読み捨てられていたため現在では2%程度しか残っていないという。もしかするとノストラダムスもののチャップ・ブックもあったかもしれないが今となっては確認するすべはない。