ノストラダムス、1984年以後2009/09/14 22:32

最近話題になったベストセラーの長編小説に村上春樹氏の『1Q84』がある。発売と同時に売り切れの書店が続出して一大ブームを引き起こしたのは、なんとなく身近に感じていた。最初は何かヘンテコなタイトルとしか思えなかったが、ふと昔読んだことがあるジョージ・オーウェルの『1984年』を思い出した。村上氏の本は未読であるが、ウィキペディアによると、やはりオーウェルの未来小説を土台にして書かれたらしい。オーウェルの本を読んだのは1984年より前だったが、自分自身も漠然とこの年を意識して未来を垣間見たような感覚があったかもしれない。ノストラダムスの解釈本のなかにも、この年を転換期と位置付けたものがある。タイトルは"After 1984 Nostradamus"(ノストラダムス、1984年以後)である。

著者のSpike Jamesは1923年生まれ、第二次大戦後は貨物の空輸の仕事に従事していたが1965年に退職した後は聖書の研究に打ち込んだという。本書は副題に「発見されたノストラダムスの秘密の暗号」とあり、よくある予言の解釈本である。頁をめくるといかにもお手製のタイプライターで打ったと思しき活字が並んでいる。マニアックな熱意は伝わってくる。ざっと目次を見ると、ノストラダムスの伝記、セザールへの序文の英訳、アンリ二世への書簡の英訳、過去の歴史の四行詩、1984-2000年の四行詩などが見られる。基本的には本文では四行詩は英訳で引用されており、フランス語原文は添えられていない。その代りに12章には1867年に刊行されたアナトール・ル・ペルティエの"Les Oracles de Michel de Nostredame"のファクシミリが掲載されている。

一応、序文、百詩篇1-7巻、書簡、百詩篇8-10のコピーが載っているので予言集のテクストと見なしていいかもしれない。何故かプレザージュの141番の頁が百詩篇10-100の後に付け足されている。1984年から2000年までのシナリオを描いているが、東洋の新たな司令官(中国と見なしている)との戦争がひどくなったとき、ポール・シフト(極移動)が起きるところで終わっている。傑作なのは、年表の2000年以降―私の次回作タイトル「2000年以後」に続く、とある。本当に刊行されたかどうかは定かではない。