ノストラダムス予言の解釈とヴィジュアル化2009/08/24 23:43

現在と比べて印刷技術という時代背景があっただろう。手元にある戦前のノストラダムスの解釈本を見ても挿絵はそれほど多くはなかった。挿絵を盛り込む際には特別な上質紙を差し込んでいる。その場合、挿絵の大半はノストラダムスの肖像だったり予言集の表紙である。なかにはピオッブの本(1927)のように、挿絵として奇妙な図形を延々と載せているものもあるが、これは例外であろう。戦前の本だと予言詩の解釈と的中例を印象付けるために歴史的事件の挿絵を加えたというのはあまり記憶にない。いつの頃からか、予言解釈と挿絵は切っても切れない関係となっていく。相当強引な解釈でも視覚に訴えることでなんとなく説得力を増すよう錯覚させる。『ノストラダムス―予言の真実』(創元社)はいわゆる解釈本ではないが、カラー図版を贅沢に取り入れてノストラダムス受容をヴィジュアル化した画期的な作品である。

解釈に挿絵を用いる研究家の元祖かどうかは確信が持てないが、1942年のスチュワート・ロッブの本では予言解釈に添えて多くの挿絵が用いられている。それらを見ると、単純に歴史的事件を描写するというよりは新聞に用いられるカット風で風刺画の印象が強い。"Nostradamus on Napoleon, Hitler and the present crisis"(ナポレオン、ヒトラーと現代の危機に関するノストラダムス)のix-x頁にはイラストレーションの38のリストが載っている。そのトップバッターに来るのが百詩篇5-57の解釈、モンゴルフィエ気球の挿絵である。オールドファンは高木彬光の大予言批判本を思い出すかもしれない。あるいはジェームズ・ランディのビリーバー批判のやり玉に挙がった予言を思い浮かべる人もいよう。この挿絵の注釈には2行目の訳「人は穴を通じて軍に警告する」を添えている。

こうした初期の頃のイラスト画は、現在になると歴史的事件の写真やビデオなどに置き換わった。カラー図版の先駆けとなったのはジョン・ホウグの"Nostradamus and the millenium"(邦訳『ノストラダムスの千年紀』)と見るのが有力である。以降コーヒーテーブルブックから大判の解釈本へと続いていった。予言のワンフレーズと図版のコラボレーションによって拡大解釈がよりいっそう進んだのは確かだが、予言解釈を楽しむ読者に対してはヴィジュアル化はより興味を引く効果があったはずだ。

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