トルネ・シャヴィニーの大予言者の手紙(1870) ― 2009/01/10 23:42

1870年に出版されたアンリ・トルネ・シャヴィニーの本を入手した。表扉のタイトルは"Lettres du grand prophete d'apres l'histoire predite et jugee par Nostradamus et l'apocalypse interpretee par le meme auteur"(ノストラダムスにより予言し判定された歴史に基づく大予言者の手紙および同著者により注釈された黙示録)となっている。本の背表紙を見ると、金文字で「トルネ・シャヴィニー、ノストラダムスに関する解説、1870-1871」とある。本の中を見ると、317頁までが1870年に出版された「大予言者の手紙」で、後に56頁からなる1871年の「ノストラダムスによる予言の肖像」が続いている。後者は、BnFで公開されているのとまったく同じだった。今から100年以上も前の本は、こういった別々の原稿というか、別の本を一緒にまとめて製本することがあったようだ。
トルネが大のノストラダムス好きであるのは間違いない。何せ、20年ほどの間に、次から次にノストラダムスの解釈本を執筆している。現時点でトルネに匹敵する本を出しているのはドイツのマンフレッド・ディムデくらいだろう。解釈者としての評価はどうか。同じ信奉者のイオネスクは「著者は大いなる学殖すること多きも、過大の幻想に疾ることも少なからず。」(『ノストラダムス・メッセージ』341頁)とコメントしている。本書「大予言者の手紙」はその名の通り書簡形式になっている。日付を追ってみよう。序文が1870年11月1日。それから何故かミ・ド・ノストラダムスの「素晴らしき予言者」が来る。その後はテーマごとに書簡形式でトルネの解釈が載っている。1870年11月10日「セダン」、同日「国家の防御」、11月11日「黄金の世紀」・・・・、1871年6月9日「大予言者」。
11月から6月にかけて週一回くらいの割合で書簡を書き続けている。もしもトルネが現代に登場したならば、おそらくブログで予言解釈を配信し続けていることだろう。本書でも様々な文献を参照しており、その学殖のほどが伺える。この本は二つの本を組み合わせた再版であるが、トルネは出版された自分の著書を丹念に読み込んでるようで、追加の章で注記を加え、誤植について修正し、目次を新たに作成している。トルネの解釈については賛同できる部分が少ないが、こういった真摯で勤勉な態度については好感が持てる。
トルネが大のノストラダムス好きであるのは間違いない。何せ、20年ほどの間に、次から次にノストラダムスの解釈本を執筆している。現時点でトルネに匹敵する本を出しているのはドイツのマンフレッド・ディムデくらいだろう。解釈者としての評価はどうか。同じ信奉者のイオネスクは「著者は大いなる学殖すること多きも、過大の幻想に疾ることも少なからず。」(『ノストラダムス・メッセージ』341頁)とコメントしている。本書「大予言者の手紙」はその名の通り書簡形式になっている。日付を追ってみよう。序文が1870年11月1日。それから何故かミ・ド・ノストラダムスの「素晴らしき予言者」が来る。その後はテーマごとに書簡形式でトルネの解釈が載っている。1870年11月10日「セダン」、同日「国家の防御」、11月11日「黄金の世紀」・・・・、1871年6月9日「大予言者」。
11月から6月にかけて週一回くらいの割合で書簡を書き続けている。もしもトルネが現代に登場したならば、おそらくブログで予言解釈を配信し続けていることだろう。本書でも様々な文献を参照しており、その学殖のほどが伺える。この本は二つの本を組み合わせた再版であるが、トルネは出版された自分の著書を丹念に読み込んでるようで、追加の章で注記を加え、誤植について修正し、目次を新たに作成している。トルネの解釈については賛同できる部分が少ないが、こういった真摯で勤勉な態度については好感が持てる。
コメント
_ 研究者 ― 2009/01/12 15:13
_ 新戦法 ― 2009/01/13 00:03
研究者さん
> ノストラダムス現象を語る上では誰もがトルネのような一面を持っていたのではないでしょうか。
ノストラダムス現象の捉え方がちょっとずれていませんか。ノストラダムスの予言を自由気儘に解釈することとは違います。予言の解釈でもいいんですがそれに影響を受けたと見なせる事件や社会現象と考えています。トルネの解釈は、その影響力の大きさから19世紀後半のフランスにおけるノストラダムス現象の一端を担っていると思います。
> 新戦法さんは、信奉者やレオニのような研究者で誰が一番お気に入りですか?
お気に入りというのは特にはないのですが、これまでで一番衝撃を受けたのがブランダムールの『占星愛好家ノストラダムス』ですね。従来の研究書とはまったくアプローチの仕方が異なり、見たことのない一次、二次資料を引用した学術な分析にプロの研究というものを思い知らされました。
> ノストラダムス現象を語る上では誰もがトルネのような一面を持っていたのではないでしょうか。
ノストラダムス現象の捉え方がちょっとずれていませんか。ノストラダムスの予言を自由気儘に解釈することとは違います。予言の解釈でもいいんですがそれに影響を受けたと見なせる事件や社会現象と考えています。トルネの解釈は、その影響力の大きさから19世紀後半のフランスにおけるノストラダムス現象の一端を担っていると思います。
> 新戦法さんは、信奉者やレオニのような研究者で誰が一番お気に入りですか?
お気に入りというのは特にはないのですが、これまでで一番衝撃を受けたのがブランダムールの『占星愛好家ノストラダムス』ですね。従来の研究書とはまったくアプローチの仕方が異なり、見たことのない一次、二次資料を引用した学術な分析にプロの研究というものを思い知らされました。
_ 研究者 ― 2009/01/13 06:51
新戦法さん、コメントありがとうございます。
>ノストラダムス現象の捉え方がちょっとずれていませんか。
すいませんでした。ちょっと視野が狭かったです。私は一つの考えを妄信する癖があるようですね。新戦法さんのような人がいると大変助かります。これからもどんどん指摘してください。(^^;
>お気に入りというのは特にはないのですが、これまでで一番衝撃を受けたのがブランダムールの『占星愛好家ノストラダムス』ですね。
私は英語やフランス語は大学の教養レベルなので洋書の原書をバリバリ読みこなす力はないのですが、岩波書店の『ノストラダムス予言集』でブランダムールの主題別の目次を作っているのを見てこんなアプローチの仕方もあったのかと思いました。
ブランダムールの『ノストラダムス予言集』もそうですが学術的すぎて、一般の読者のレベルを超えているように思うのですが、もっと平易にして、なおかつ日本語にした文献が欲しいです。
もっとも、sumaruさんが新サイトの設立を頑張っていますが、本にすることによって価値がでる気がします。
>ノストラダムス現象の捉え方がちょっとずれていませんか。
すいませんでした。ちょっと視野が狭かったです。私は一つの考えを妄信する癖があるようですね。新戦法さんのような人がいると大変助かります。これからもどんどん指摘してください。(^^;
>お気に入りというのは特にはないのですが、これまでで一番衝撃を受けたのがブランダムールの『占星愛好家ノストラダムス』ですね。
私は英語やフランス語は大学の教養レベルなので洋書の原書をバリバリ読みこなす力はないのですが、岩波書店の『ノストラダムス予言集』でブランダムールの主題別の目次を作っているのを見てこんなアプローチの仕方もあったのかと思いました。
ブランダムールの『ノストラダムス予言集』もそうですが学術的すぎて、一般の読者のレベルを超えているように思うのですが、もっと平易にして、なおかつ日本語にした文献が欲しいです。
もっとも、sumaruさんが新サイトの設立を頑張っていますが、本にすることによって価値がでる気がします。
_ 新戦法 ― 2009/01/13 23:38
研究者さん
> 私は英語やフランス語は大学の教養レベルなので洋書の原書をバリバリ読みこなす力はないのですが
大学の教養レベルの語学力があれば、後は熱意によって辞書を引きながらでも読めると思いますよ。きちんとノストラダムスを論じるには避けて通れない道ですから。だんだん日本語の本だけでは物足りなくなるはずです。(^^;
> 岩波書店の『ノストラダムス予言集』でブランダムールの主題別の目次を作っているのを見てこんなアプローチの仕方もあったのかと思いました。
原書には、主題別の目次はありませんので編訳者によるものです。というか、岩波の本は実質的にはブランダムールの釈義をベースとした書下ろしとなっているので、原著とは相当かけ離れたものと受け取るべきでしょう。ブランダムールの校訂のすごさは岩波の本から読み取ることはできないと思います。
> ブランダムールの『ノストラダムス予言集』もそうですが学術的すぎて、一般の読者のレベルを超えているように思うのですが
学術的すぎるというのがよくわかりませんが、研究者さんはノストラダムスにいったい何を求めているのでしょう?実証的な研究を知りたいのであればsumaruさんのサイトを手がかりとすればいいですし、通俗的な解釈を求めるのであれば、そういった本は星の数ほどあります。いずれにしても研究するのであれば人任せでなく、ご自身でも少し調査されてはいかがでしょうか。
> 私は英語やフランス語は大学の教養レベルなので洋書の原書をバリバリ読みこなす力はないのですが
大学の教養レベルの語学力があれば、後は熱意によって辞書を引きながらでも読めると思いますよ。きちんとノストラダムスを論じるには避けて通れない道ですから。だんだん日本語の本だけでは物足りなくなるはずです。(^^;
> 岩波書店の『ノストラダムス予言集』でブランダムールの主題別の目次を作っているのを見てこんなアプローチの仕方もあったのかと思いました。
原書には、主題別の目次はありませんので編訳者によるものです。というか、岩波の本は実質的にはブランダムールの釈義をベースとした書下ろしとなっているので、原著とは相当かけ離れたものと受け取るべきでしょう。ブランダムールの校訂のすごさは岩波の本から読み取ることはできないと思います。
> ブランダムールの『ノストラダムス予言集』もそうですが学術的すぎて、一般の読者のレベルを超えているように思うのですが
学術的すぎるというのがよくわかりませんが、研究者さんはノストラダムスにいったい何を求めているのでしょう?実証的な研究を知りたいのであればsumaruさんのサイトを手がかりとすればいいですし、通俗的な解釈を求めるのであれば、そういった本は星の数ほどあります。いずれにしても研究するのであれば人任せでなく、ご自身でも少し調査されてはいかがでしょうか。
_ 研究者 ― 2009/01/14 07:03
新戦法さん、コメントありがとうございます。
>ブランダムールの校訂のすごさは岩波の本から読み取ることはできないと思います。
新戦法さんがすごいというのだから余程のものなんですね。是非欲しくなってきました。(^^;
>ご自身でも少し調査されてはいかがでしょうか。
まったくもって返す言葉がありません。私の実証的な研究のレベルや通俗的な解釈の知識など乏しいものです。まだまだノストラダムス初心者ですね。(^^;
これからも、新戦法さんのブログやsumaruさんのサイトで勉強させていただきます。よろしくお願いします。
>ブランダムールの校訂のすごさは岩波の本から読み取ることはできないと思います。
新戦法さんがすごいというのだから余程のものなんですね。是非欲しくなってきました。(^^;
>ご自身でも少し調査されてはいかがでしょうか。
まったくもって返す言葉がありません。私の実証的な研究のレベルや通俗的な解釈の知識など乏しいものです。まだまだノストラダムス初心者ですね。(^^;
これからも、新戦法さんのブログやsumaruさんのサイトで勉強させていただきます。よろしくお願いします。
_ 研究者 ― 2009/01/14 16:08
再びこんにちは、新戦法さん。
先程、新戦法さんにゲキを飛ばされて私の本当に知りたいことはノストラダムスではないことに気が付きました。
今、現在興味を持っていることは先日の「万物照応」つまりは「コレスポンダンス」です。これは19世紀後半にシャルル・ボードレールを中心に運動のあった「フランス象徴詩」に関連のあるものです。
代表作は『悪の華』、『パリの憂鬱』です。「フランス象徴詩」とは一般的には、人間の夢、内面性、神秘性、デカダンスなどを象徴的に捉えたり詩の音楽化を目指したり、言葉の化学反応、事物が時間の中でどうやって照応するかといったものです。
隠秘学的にはミクロコスモスとマクロコスモスの呼応や相似性、ユングのいう「集合的無意識」、パラケルススでいう「錬金術の賢者の石」への関連性といったことです。
まだまだ、オカルト、疑似科学から離れることはできないですがなんとかこれらに法則性を見つけて、新戦法さんのおっしゃったメインカルチャーにもっていきたいです。
新戦法さん本当にありがとうございました。曖昧だった自分に目標ができました。(^^;
先程、新戦法さんにゲキを飛ばされて私の本当に知りたいことはノストラダムスではないことに気が付きました。
今、現在興味を持っていることは先日の「万物照応」つまりは「コレスポンダンス」です。これは19世紀後半にシャルル・ボードレールを中心に運動のあった「フランス象徴詩」に関連のあるものです。
代表作は『悪の華』、『パリの憂鬱』です。「フランス象徴詩」とは一般的には、人間の夢、内面性、神秘性、デカダンスなどを象徴的に捉えたり詩の音楽化を目指したり、言葉の化学反応、事物が時間の中でどうやって照応するかといったものです。
隠秘学的にはミクロコスモスとマクロコスモスの呼応や相似性、ユングのいう「集合的無意識」、パラケルススでいう「錬金術の賢者の石」への関連性といったことです。
まだまだ、オカルト、疑似科学から離れることはできないですがなんとかこれらに法則性を見つけて、新戦法さんのおっしゃったメインカルチャーにもっていきたいです。
新戦法さん本当にありがとうございました。曖昧だった自分に目標ができました。(^^;
_ 新戦法 ― 2009/01/15 23:18
研究者さん
> 先程、新戦法さんにゲキを飛ばされて私の本当に知りたいことはノストラダムスではないことに気が付きました。
ちょっと表現がきつかったですかね。ゲキを飛ばしたつもりはなかったのですが。それぞれ関心の持つ分野は違うでしょうから、新たな目標に向かって進んでください。(^^;
> 先程、新戦法さんにゲキを飛ばされて私の本当に知りたいことはノストラダムスではないことに気が付きました。
ちょっと表現がきつかったですかね。ゲキを飛ばしたつもりはなかったのですが。それぞれ関心の持つ分野は違うでしょうから、新たな目標に向かって進んでください。(^^;
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今回のアンリ・トルネ・シャヴィニーの件ですがノストラダムス現象を語る上では誰もがトルネのような一面を持っていたのではないでしょうか。
皆が自分の好きなテーマをノストラダムスに映し出す鏡、合わせ鏡というかなんというか。
それこそがノストラダムス現象のように思います。新戦法さんはトルネに好感をお持ちのようですね。誤植を訂正したりする点とか、真摯な態度とか。
新戦法さんは、信奉者やレオニのような研究者で誰が一番お気に入りですか?