ノストラダムス封印された予言詩(上) ― 2010/03/25 23:55
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4102175210.html
マリオ・レディング 務台夏子訳 ノストラダムス封印された予言詩(上) 新潮文庫 2010年3月10日 を読んだ。先日『ミクロコスモス』と一緒に注文し届いた、ノストラダムスをテーマとした小説である。日本で海外のノストラダムスものの小説が翻訳されるのは珍しい。古いところではジョン・ガードナーの『裏切りのノストラダムス』やレイモンド・レナードの『ノストラダムスの遺産』が思い浮かぶが、ブームを過ぎた今となって、どうして翻訳されたのだろうか。原題は"The Nostradamus Prophecies"、この本自体出版されていたのは知っていたが、また似たような解釈本と思い込んでいたのでまったくのノーマークだった。著者のマリオ・レディングはこれまでも信奉者の立場からノストラダムスの解釈本を出ており、手許には"Nostradamus:The complete prophecies for the future"(ノストラダムス、未来に向けた完全予言)と"Nostradamus: The good news"(ノストラダムス、グッドニュース)の2冊がある。その後2009年、2010年にも相次いでノストラダムス本を出版しているが未見である。
アマゾンでの本書の紹介記事によると、国際的なベストセラーで27カ国で翻訳権が売られた。確かにフランス語版も出ていた。"Les prophéties perdues de Nostradamus "(ノストラダムスの失われた予言)463頁の長編ものである。さて日本語版は文庫で上下巻に分かれている。冒頭の導入部分では、ノストラダムスが百詩篇第七巻の未刊の58篇を竹筒に封印して秘密の場所に保管したというネタ振りが来る。この失われた予言というお宝をめぐり、ノストラダムス研究家サビアと彼の敵であるバールが謎解きしながら核心に迫っていくミステリである。このクエストもののパターンは『ダビンチ・コード』やアニメのルパン三世などと大して変わり映えはしない。それでもノストラダムス研究家らしく本物のテクストであるノストラダムスの遺言補足書を謎解きの鍵に用いている。122頁には、ノストラダムスサロンのノストラダムス遺言補足書(http://www.ne.jp/asahi/mm/asakura/nostra/biogra/codicil.htm)の29節のフランス語原文が載っている。娘のマドレーヌに遺したクルミ材の金箱二点について書かれているが、受遺者以外の何人も見てはならないとある。ここに失われた予言詩を見つける鍵が隠されているというのは面白い。
読み進めていくと、鍵を握るジプシーの文化を素材に取りこんでいるが少し不自然さも感じる。そもそもノストラダムスが16世紀に仕込んだ謎解きがなぜ21世紀になってから行われるのか。ストーリ展開が目まぐるしく、対決のクライマックスシーンもどうも平面的でうっかり読み飛ばしそうになる。おそらく著者のマリオは自分自身をサビアに投影してアドベンチャーを疑似体験したのではないだろうか。まだ半分しか読んでいないので後半どうなるかはお楽しみである。
マリオ・レディング 務台夏子訳 ノストラダムス封印された予言詩(上) 新潮文庫 2010年3月10日 を読んだ。先日『ミクロコスモス』と一緒に注文し届いた、ノストラダムスをテーマとした小説である。日本で海外のノストラダムスものの小説が翻訳されるのは珍しい。古いところではジョン・ガードナーの『裏切りのノストラダムス』やレイモンド・レナードの『ノストラダムスの遺産』が思い浮かぶが、ブームを過ぎた今となって、どうして翻訳されたのだろうか。原題は"The Nostradamus Prophecies"、この本自体出版されていたのは知っていたが、また似たような解釈本と思い込んでいたのでまったくのノーマークだった。著者のマリオ・レディングはこれまでも信奉者の立場からノストラダムスの解釈本を出ており、手許には"Nostradamus:The complete prophecies for the future"(ノストラダムス、未来に向けた完全予言)と"Nostradamus: The good news"(ノストラダムス、グッドニュース)の2冊がある。その後2009年、2010年にも相次いでノストラダムス本を出版しているが未見である。
アマゾンでの本書の紹介記事によると、国際的なベストセラーで27カ国で翻訳権が売られた。確かにフランス語版も出ていた。"Les prophéties perdues de Nostradamus "(ノストラダムスの失われた予言)463頁の長編ものである。さて日本語版は文庫で上下巻に分かれている。冒頭の導入部分では、ノストラダムスが百詩篇第七巻の未刊の58篇を竹筒に封印して秘密の場所に保管したというネタ振りが来る。この失われた予言というお宝をめぐり、ノストラダムス研究家サビアと彼の敵であるバールが謎解きしながら核心に迫っていくミステリである。このクエストもののパターンは『ダビンチ・コード』やアニメのルパン三世などと大して変わり映えはしない。それでもノストラダムス研究家らしく本物のテクストであるノストラダムスの遺言補足書を謎解きの鍵に用いている。122頁には、ノストラダムスサロンのノストラダムス遺言補足書(http://www.ne.jp/asahi/mm/asakura/nostra/biogra/codicil.htm)の29節のフランス語原文が載っている。娘のマドレーヌに遺したクルミ材の金箱二点について書かれているが、受遺者以外の何人も見てはならないとある。ここに失われた予言詩を見つける鍵が隠されているというのは面白い。
読み進めていくと、鍵を握るジプシーの文化を素材に取りこんでいるが少し不自然さも感じる。そもそもノストラダムスが16世紀に仕込んだ謎解きがなぜ21世紀になってから行われるのか。ストーリ展開が目まぐるしく、対決のクライマックスシーンもどうも平面的でうっかり読み飛ばしそうになる。おそらく著者のマリオは自分自身をサビアに投影してアドベンチャーを疑似体験したのではないだろうか。まだ半分しか読んでいないので後半どうなるかはお楽しみである。
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