第35期棋王戦第四局は久保が勝って最終局へ2010/03/20 23:24

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この対局の二日目前に難敵の羽生を倒して王将を奪取、初の二冠になったばかりの久保。棋王戦では1-2とカド番に追い込まれており、第四局に敗れると失冠、二冠が三日天下に終わってしまうところだった。佐藤もここまでくればA級陥落の振り替わりに是非とも棋王は奪還しておきたいだろう。結果を見ると、やはり勢いに勝る、久保の研ぎ澄まされた感性と終盤力でなんとか凌いだ感じである。戦型は久保が後手番ならローテーション通りのゴキゲン中飛車は当然予想される。ここで決めたい佐藤の作戦が注目されたが、最近あまり見ない▲7八金型を選択。正直いって振り飛車に対して居飛車からこの金を上がるのは違和感があるが、現在では玉の囲い方も工夫されており、実際には有力な指し方という。

22手目△3三同桂となったところでは、形の上では新戦法の基本形とまったく一緒。5筋の歩を保留しているところがポイントである。解説によるとこの局面は実戦例が3局あって結果はすべて後手の勝ち。見掛け以上に後手が勝ちやすい形なのかもしれない。佐藤のほうは中飛車側の常道である2筋への飛車の転換を警戒しながら、玉を深く囲い金銀四枚を集結させる。用意周到に練ってきた作戦だ。後手の久保は片銀冠でなく銀矢倉へ組み替える構想を披露するが、ここでは先手のほうが少し作戦勝ちのような気がする。佐藤は、玉も固いしここが戦機とみて46手目△4一飛に対して▲3五歩から攻めに出る。ところが72手目△1三角と打たれて先手は大駒を全部失い、小駒だけの攻めになってしまう。明らかに先手がやりそこなった感じがする。

アマチュアの実戦ならば先手のほうが勝ちやすいかもしれない。トッププロ同志だと、少しの優位をキープする技術に優れているので固い玉型を頼りに食いつくだけでは勝ち切れない。久保は先手の薄い端を攻めながら自陣は馬一枚だけで巧みに凌いでいく。優勢な終盤をきっちり勝ち切った久保は流石に絶好調である。このままの勢いでタイトル防衛となれば九段への昇段もついてくる。佐藤が最終局に向けてどういう秘策を練ってくるか、3月30日の年度末の大勝負に期待したい。