第22期竜王戦第三局は異例のハイペースで進む2009/11/10 23:55

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ここまで2連敗スタート、巻き返しを図りたい森内は第三局の先手番の作戦を周到に準備してきたはずだ。ここは何としても一番返したい森内の採った作戦は角換わり腰掛け銀の同型だった。渡辺は後手指せる派の代表格なので避けることはしない。この将棋は仕掛けの時点から数多くの実戦が指され、終盤の入り口まで定跡化されている変化もあるほどだ。こういっちゃ悪いが何かとっておきの研究手が想定変化のなかに隠されていれば一発で将棋が終わる可能性も秘めている。こうした研究合戦は将棋の実力とは別なところで決着がつく場合もあり、お互いに相当リスキーなはずだ。ところが1日目の昼食休憩の時点で手数は66手も進んだ。昼休みにチラッと棋譜を見てみたが異例のハイペースに衝撃を受けた。このままいけば1日で将棋が終わってしまうのではないかと。

前回の二人の対戦のときにも横歩取り△8五角戦法で指定局面までハイペースで進んだ例もあった。しかし今回は両者とも永世称号同士。もう少しコクのある落ち着いた展開になるかと思えた。角換わり腰掛け銀の同型の仕掛けを見ると、最強の盾と最強の矛の中国の故事を思い起こす。先手が矛で後手が盾、どちらとも自分のほうが指せると見ている。渡辺にしてみれば森内が時間を使わずビシビシと指してくるので自分だけ時間を使うわけにはいかない。双方が突っ張ると必然こういう展開になる。最高のタイトル戦としてはあまり感心できることではないが、これも両者の対戦における盤上のパフォーマンスといえよう。観戦記を書く方はこういったドラマをうまく料理してほしいものだ。両者の念頭にあるのが今期の竜王戦決勝トーナメントの松尾-豊島戦、順位戦の松尾-豊川戦である。

過去の実戦例では先手のほうに分がありそう。森内も当時控え室で研究していたとの証言があり、相当に自信を持っている。解説陣の見解もあまりに後手玉が薄いので実戦的に先手が良さそうな感触である。そうすると、何かひねり出さなければならないのは渡辺の方となる。封じ手は前例を踏襲した△2七桂と打った局面。ここで先手はどう攻めていくか、手の広い所である。さしあたり▲5八金が当たっているが▲2四歩△同歩は入りそう。その後の展開はまったく読めない。どちらの研究が優っているのか、明日その全貌が明らかになる。