持続力2009/04/29 23:49

http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4062723638.html
山本博 持続力 講談社+α新書 2006年4月 を読んだ。著者はアーチェリーのオリンピック銀メダリストで、中年の星としてテレビ番組にも出演している。タイトルからいったいどの分野での内容か分からないが山本氏の名前が出れば「ああっ、あの・・・」と思い当たる。中学時代にアーチェリーを始めて、1984年大学時代にロサンゼルスオリンピックで銅メダル、その後トッププレーヤーとして活躍するも2000年のシドニーでは出場を果たせなかった。2004年のアテネでは20年ぶりに銀メダルを獲得し大きく注目された。本書はアーチェリーとともに生きてきた著者の足跡を余すところなく書き記している。当然2008年の北京も狙っていたのだが残念なことにオリンピック出場を落選してしまった。

それにしてもアーチェリーというスポーツではどちらかといえばマイナーな競技をコツコツと毎日トレーニングに励み、20年ぶりのメダルまで続けてこれたというのは尋常な精神力ではない。シドニーの落選を機に著者のなかで様々な葛藤と戦っていたことが書かれている。スポーツでこんなに長きに渡りトップクラスのポジションを続けるというのはあまり聞いたことがない。それこそ自分の息子くらいの歳の差のある選手と対峙することもある。息の長さでは将棋のプロ棋士とも多少通じるものがある。さらに選手であると同時に子供たちに教える指導者としての姿も描き出されている。さりげなく一般サラリーマンの事例に譬えているところもあるが、全体的に見ると内容がダブっているところも多い。

分野は違えど、前に紹介した羽生名人のいう強くなる子は続ける力を持っていると、本質は非常に似通っている。しかし一度栄光の座についてからさらに20年間同じ努力を費やすというのは、口で言うのはたやすいが実際にできることではない。息子さんもアーチェリーの選手になったという所で本書は終わっている。本書は読者へというよりもむしろ息子に宛てたメッセージといえるかもしれない。