トルネ・シャヴィニーのノストラダムス本2009/01/02 23:09

年末の31日から里帰りして今さっき自宅に戻ったところだ。インターネットに接続していなかったこともあり、このブログも休んでいた。この間もアクセスしていただいた方がいたようで大変申し訳ない。これからもマイナーなマニアック路線(?)で進めていく予定なので、皆様におかれましては今年もよろしくお願い申し上げます。最近はノストラダムス関連文献が次から次にネット上で公開されている。フランス国立図書館BnFのサイト(http://catalogue.bnf.fr/)で検索してみると、公開されているノストラダムス関連文献が増えているのに驚く。試しにHenri Torné-Chavignyと入力すると45冊の関連書がヒットし、そのうちの3冊は電子データで読むことができる。アンリ・トルネ・シャヴィニーとは19世紀フランスのノストラダムス解釈者である。

彼は小さな村であるラ・クロットの司祭であったが、ノストラダムスに傾倒するや予言詩の解釈に没頭し浩瀚な著作を世に送り出している。1860年代フランスは一種の終末的な破局に向かっていると感じる、様々な兆候が現れていた。トルネの解釈はフランス政府の役人にも少なからず影響を与えたという。現在ではトルネの評価は甚だ芳しくない。例えばラメジャラーは「手品ともいえる巧妙な自己欺瞞的ことば捌きを通じて既知の史実と解釈者の事前の期待を合致させ、ノストラダムスの予言を歪曲して解釈する現代の伝統を確立した第一人者」と手厳しい。そうであるなら今更取り上げる必要もないといえる。ところがウィキペディアの記事では「現在の実証的な研究にも寄与する重要な指摘」を行っているとある。やはり実際の著作を見てみたくなるものだ。

1861年、黙示録とノストラダムスの予言の一致(http://catalogue.bnf.fr/ark:/12148/bpt6k119150x
1871年、ノストラダムスに従った予言の肖像(http://catalogue.bnf.fr/ark:/12148/bpt6k5453796k
1874年、大予言者の新しい手紙(http://catalogue.bnf.fr/ark:/12148/bpt6k54526587

興味のある方はちょっと覘いてみてはいかがだろうか。

ルイ十四世の皇帝の星占い2009/01/03 23:44

http://catalogue.bnf.fr/ark:/12148/bpt6k72774c
フランス国立図書館のウェブで17世紀のノストラダムス予言の解説書を見つけた。タイトルは"L'Horoscope imperial de Louis XIV. Dieu-Donné. Predit par l'oracle francois & Michel Nostradamus"(神より賜ったルイ十四世の皇帝の星占い、フランスの神託とミシェル・ノストラダムスにより予言された)で1652年にパリで出版された16頁の小冊子である。ブナズラの文献書誌228頁に載っているが、書誌情報のみで解説は付いていない。ルイ十四世が即位したのは1643年であるが実質的にはマザランが政治の実権を握っていた。この本が書かれた当時はフランスでフロンドの乱(1648-1653)の真っ只中である。最終的には鎮圧されて絶対王政の確立につながったとはいえ、当初は反乱軍がパリを攻囲したという。

反マザランの誹謗中傷文書であるマザリナードの印刷物が大量に出回った時期にあたる。こういった時代背景を見ても、小冊子のスタンスはルイ十四世に非常に好意的なものと受け取れる。実際に中身を見ると、我らが神託と呼んでいるのはノストラダムスの四行詩や六行詩である。予言詩の原文を掲げて解釈を行って近未来を予想する。当然ながら当面の関心事であるフロンドの乱の行く先を占ったものといえるだろう。引き合いに出されている詩:4-93、3-15、9-86、六行詩32、9-51、6-70、10-90、3-93、8-9、5-6、8-81、6-67、六行詩58、4-2、六行詩49、9-52、4-5、3-49。「パリが廃墟と化したためにアヴィニョンに帝国のすべての首長が留まる」という句を引用して近未来の暗雲を示唆する。

しかし作者であるジャック・マンゴーは、結論として国王がパリに戻らなければ平和とはならない、と希望的な観測で締めている。皮肉なことに反乱軍の鎮圧は果たせたが、ルイ十四世はこの幼いときの体験からかベルサイユにその舞台を移してしまったのである。

危機を乗り切るための予言と超予測2009/01/04 23:53

http://www22.big.or.jp/~bnp/top.html
長かった正月休みも今日で終わり、明日からはまた通常の生活に戻る。休みの最後の記念にというわけでもないが、東京カテドラル聖マリア大聖堂で行われた10時からのミサに参列した。1時間ほどで終わり、帰りに売店でキリスト教関係の本を3冊購入、さらに池袋のジュンク堂書店で4冊購入した。そのうちの1冊、井村宏次 危機を乗り切るための予言と超予測 ビイング・ネット・プレス 2009 を読んだ。発行日が2009年1月7日とあり、正真正銘の新刊である。紀伊国屋のウェブにはまだ登録されていない。ざっと目を通してみると、大衆向けの予言というものを実にわかりやすく扱っている。予言とは何か、予言者とは何者か、予言の的中とは、・・・予言に従い近未来に起こる事件のリストを挙げて警告している。

過去の予言がほとんど外れていることを認めながらも、世に出回っている不確かな予言を頼りに予測するというのはちょっと違和感がある。ノストラダムスについても触れている。著者が夢中で読んだという、五島氏の『ノストラダムスの大予言』でなされた1999年人類滅亡という解釈が外れた2000年にはブームが雲散霧消したと記す。ところが同書178頁には、こうしたほとぼりがさめた頃にノストラダムスの大破滅予言が発表されたとある。「ミッシェル・ラスフォード博士の『ノストラダムスの暗号』によると、2004年の5月にローマ国立図書館のスタッフのひとりが古文書庫の中から”知られざるノストラダムスの手写本”を発見したという。」そんな話は聞いたことがないし、2008年に出版されたラスフォードの"The Nostradamus code, World War III"も手元にあるが、そんな記述は見当たらない。

この部分のソースはどこにあるのだろう。単なる箔付けのためのハッタリなのだろうか。これが本当なら大発見であるがその可能性はきわめて低い。もっともこの1冊を読めば今年からここ数年に至るまでの予言を概観できるので予言ファンにとっては便利な本であろう。ただし、著者本人も冷静に「予言は大げさに出る」としている。日付もピタリと当たることなく、規模も10分の1(?)くらいのものらしいので心構えさえすれ思い悩む必要はなさそうである。

ノストラダムス・コード2009/01/05 23:48

http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htmy/0977634108.html
昨日ちょっと触れたミカエル・ラスフォードの著作について紹介してみたい。タイトルが"The Nostradamus Code : World War III"(ノストラダムスの暗号、第三次世界大戦)となっている。ノストラダムス・コードというタイトルはオーヴァソンの原著(邦訳『ノストラダムス大全』)やラモッティの英訳本(邦訳『ノストラダムス新世紀予言』)でも使われており、副題がないと非常に紛らわしい。予言解釈本にはノストラダムス予言集のなかに自分だけが見つけた特別な暗号を解読したと展開をしているものが多い。そのためコードをいう単語を好んで用いている。シャトランの邦訳『ノストラダムスの極秘暗号』もその一例といえる。

ラスフォードの本は85頁のペーパーバックである。紀伊国屋のウェブにもあるように8章から成る。1 序論、2 混乱の時代の配役及び登場人物、3 反キリスト、4 混乱の時代、5 混乱の時代の科学上の業績、6 第三次世界大戦、7 地質学上の精神上の地球の変化、8 偉大なる天才、おまけの章。さらに各章も細かい節に区切られており、その見出しを追うだけでも内容がわかる。ラスフォードは解釈にあたって予言集の章番号を挙げているが原詩の引用は行っていない。どこに暗号があるのだろう。ラスフォードは最先端のデータを駆使しながら、暗示的な構図との関連性を求めて広大で複雑な言葉のパズルを徹底的に調査した。そうして予言モデルを見つけたという。

導き出されたのが第三次世界大戦の隠された時系列というが、1980年代のノストラダムス本に見られた、自分の想定するシナリオに沿って予言詩を並べ直してストーリを創作するのと大差がないように思える。おまけの章では第三次世界大戦にどう備えるべきか、ありがたいアドバイスをしてくれる。ラスフォードにはドクター(博士)の称号が付いているが何の専門家なのかは記されていない。

棋王戦挑戦者は2連勝で久保に決まった2009/01/08 21:43

http://live.shogi.or.jp/kiou/
いや~、まいった。どうも風邪を引いてしまったようで、昨日、一昨日とダウン。病院で診てもらったらインフルエンザでなかったのでホッと一安心である。今日も電車に乗るとマスクをしている人がそこらにいる。この季節は風邪が流行っているのだ。体調には気をつけなければ。昨日のことになるが、久保が敗者組から2連勝して棋王戦の挑戦者に名乗り出た。木村もあと1勝が届かずさぞかし歯がゆかっただろう。久保はこれまでのタイトル戦はすべて羽生に挑んでいるがことごとく跳ね返されている。今回は佐藤棋王への挑戦で内心大きなチャンスと捕らえているに違いない。タイトルを取るのは充実している今こそ一番可能性が高いはずだ。

ネット中継された棋譜を並べてみた。序盤はいつも指している新戦法と同じような展開で非常に参考になる。最近はアマの大会でも木村が得意としている二枚銀での押さえ込みを狙ってくる場合がある。実際にうまく押さえ込まれて作戦負けになったこともある。そういった意味で久保の指し回しは中飛車党のきれいなお手本となる。それにしても久保はどうしてこれほど巧みに駒が捌けるのだろう。7筋と玉頭でごちゃごちゃ指している間にあっという間に理想的に捌けてしまった。75手目▲6六角と引いたところでは左辺の金銀が自分だけ手駒になっており飛車角も急所に配置されている。97手目には自陣に金を埋め込む▲5八金打で絶対に落とさないという辛い手も見せた。

この将棋での終盤はわかりやすい一手勝ちとなったが、タイトルを奪取するには優勢な局面から最善で勝ちを狙う手堅さが必要となる。久保には是非初タイトルを取らせてやりたい。そんな気にさせる将棋の内容であった。もっとも佐藤も棋王を失うと無冠の九段になってしまう。昨年のA級順位戦最終局のような鬼と化す姿が見られるのか。フレッシュな顔合わせは楽しみである。