NHK番組 ノストラダムス Part-2 ノストラダムス伝説の真実2014/12/21 23:55

sumaruさんのブログでは早速「File-25 予言者ノストラダムスの謎 Part-2」についての関連記事が書かれている。番組自体は昨日12月20日にNHK総合で放映されたが実際に見たのはついさっき、録画である。番組全体はおおむね好感が持てるが気になったのはノストラダムスの伝説が1594年のシャヴィニーの著作から始まったという件である。まずシャヴィニーの名前が「ジャン・ド・シャビニー」とキャプチャーがある。書籍版では「ジャン・ド・シャヴィニー」とあり表記が異なる。シャヴィニーについては実際いろいろな筆名が使われているが本書では「ジャン・エメ・ド・シャヴィニー」が正しい。

問題なのは『フランスのヤヌス・第一の顔』でノストラダムスの死後250以上言い当てている予言があると判定しているとしたところだ。書籍版では141とあるのがなぜ大幅に上増しされたのだろう。それについては番組に情報提供したsumaruさんの見解が誤って伝わったと正直に書かれている。自分自身はシャヴィニーの著作を細かく分析したことはないがギナールの解説によると、ノストラダムスの死後約35年間を120篇の四行詩がカバーしている。実際にギナールの作成した四行詩リストを見ると、年代を付して解釈されたのは123篇である。これは11,12巻を含む予言集の四行詩が対象である。

sumaruさんも書いているように『フランスのヤヌス・第一の顔』ではノストラダムスが毎年発行した暦(アルマナ)から集められた141篇の四行詩がバラバラに組み込まれている。暦の四行詩は必ずしも表題にある年月に対応しているわけではないがシャヴィニーは拡大解釈して100年間の歴史に当て込んでいる。番組の紹介だと視聴者が予言集のなかで250篇以上当たった予言があると誤解してしまいそうである。確かにシャヴィニーは師であるノストラダムスを予言者として持ち上げる解釈を並べたのは間違いないし、今日まで綿々と続く解釈者の先鞭を切ったのは周知の事実である。

しかしながら、これを誇張するためか、百詩篇のみならずあえてプレザージュもカウントに入れたように思えて仕方がない。当時は暦に挿入された四行詩群はまとまった本に載っているわけではなく、一般に認知されていたとはいえない。ノストラダムスの予言者としての風評については版を重ねていた『ミシェル・ノストラダムス師の予言集』をベースとして考えるべきではないか。よってノストラダムス伝説の形成を論じるのであれば120篇程度に留めておくのが誠実な対応だろう。もちろん時間の制約があるためにこういった細かいところまで踏み込むことが難しいのも理解できるのだが。

そのほかはアルマンさんやショマラさんのインタビューが見られたのは良かったし、第二次世界大戦におけるノストラダムスの予言を巡る諜報作戦の情報は興味深かった。ロンドンの帝国戦争博物館にそれらに関連するパンフレット類が保管されているというのも初めて知った。飛行機からビラを撒いている映像も貴重である。第二次世界大戦時のエピソードについては、古くは黒沼健氏の作品にも紹介されているが詳細は調査したことがない。ドイツの研究者のサイトでナチスのノストラダムス予言のプロパガンダに関する研究が紹介されているので一度細かく読んでみたいと思う。

コメント

_ sumaru ― 2014/12/23 00:30

 まずは250篇以上の件で思いっきり下手を打ったことをはぐらかしたり、開き直ったりするつもりはないということをまず明記した上で、ですが

>ギナールの解説によると、ノストラダムスの死後約35年間を120篇の四行詩がカバーしている。

 ギナールは死後ではなく、生前・死後をあわせて120篇としていませんか?
 実際、死からカウントすると、彼の言う「35年間」は計算が合いませんし、ルソのカウントからも乖離しすぎています。

>当時は暦に挿入された四行詩群はまとまった本に載っているわけではなく、一般に認知されていたとはいえない。

 むしろ逆に一般に認知されていなかった詩篇(百詩篇補遺を含む)まで持ち出して、ノストラダムスはこんなに当てた、としたことがシャヴィニーの一つの特色だったように思うので、そのこと自体はあまり不適切だったようには思えないのです。

 逆に百詩篇に限定してしまったら、シャヴィニーの手法が分かりにくくなるように思います。
 もちろん、そのあたりをきちんと説明したければ、予兆詩についても相応に時間を割いて誤解のないようにすべきだったろうとは私も思いますが(^^;

_ 新戦法 ― 2014/12/23 22:36

sumaruさん、

>  ギナールは死後ではなく、生前・死後をあわせて120篇としていませんか?

えっと、これはしくじりました。私もやってしまいました(^^; ギナールは1590年までとしているので死後25年を単純に計算間違いです。しかもよく読むと予言集が出版された1555年以降とあるのでここを起点にして35年ということですね。ついでにRuzoの本も追認しました。『ノストラダムスの遺言書』仏語版346頁には確かに125とあります。単にマリオ~ギナールラインの検証がふと思い浮かんだだけで引用したもので取りに足らないところで議論を吹っかけてしまって申し訳ありません。

>  逆に百詩篇に限定してしまったら、シャヴィニーの手法が分かりにくくなるように思います。

ここは反論させてください。違和感があったのでもう一度録画のナレーションを見てみると、シャヴィニーは「この本で師匠の予言集の記述とその死後に起きた大きな出来事を照らし合わせて・・・」とあり、暦の四行詩ではなく予言集の四行詩を問題にしています。それを250以上の予言で言い当てているというのは視聴者に誤解を招くと思われるため不適切ではないでしょうか。

もちろんノストラダムスを予言者として持ち上げるシャヴィニーの手法についてはsumaruさんのおっしゃる通りですが、プレザージュを含めて数字を挙げるのは番組側で演出上の誇張があると感じます。

_ sumaru ― 2014/12/24 00:59

うーん、ナレーションとの不整合ということで言えば、おっしゃるとおり不適切な提示でしたし、私の中途半端な指摘がそれを増幅させてしまったのは事実だと思います。その点は納得しました。

 ですが、

>プレザージュを含めて数字を挙げるのは番組側で演出上の誇張があると感じます。

という動機の部分では意図的な誇張だったのかどうかはなんともいえない気がします。
 私たちにとっては書誌的事実など、いちいち説明しなおすまでもない自明の話ですが、果たして予備知識があまり(または全く)なかったであろう番組スタッフが、そのあたりを正しく認識したうえで、入れる入れないの判断をできていたかには疑問があります。
(関係者の方が、シャヴィニーの本で全部で何篇の四行詩が解説されているのかも正しく認識できていなかった点などは、この疑問を補強します)

 BSプレミアム版の「141篇」の出所は不明なままですが、そこまで細かい数字で限定されている以上、おそらく現地の専門家が何かそういうことを言ったのでしょう。
 しかし、その場合に例えばその人物が「彼のprophetiesのうちの141 quatrains」と発言していたとしたら、それがノストラダムスの全予言の中での話なのか、『予言集』(の初期の版)の話なのかを適切に判断できるスタッフがいたのかどうか、私は疑問です。

 ノストラダムスに詳しくなければ、彼の予言ならば当然『予言集』に入っているんだろう、というような思い込みで誤認していたとしてもおかしくないように思えるのです。

 ですので、実際の放送内容がミスリードを招く誇張されたものだったというご意見には納得しましたが、その動機が意図的なものだったかどうかについての賛否は保留とさせて頂きます。

_ 新戦法 ― 2014/12/25 01:02

sumaruさん、

> BSプレミアム版の「141篇」の出所は不明なままですが、そこまで細かい数字で限定されている以上、おそらく現地の専門家が何かそういうことを言ったのでしょう。

この数字はノストラダムスの死後に見事当たった予言の数というよりは、現地の専門家(アルマンさん?)と的中の話をしているときにプレザージュの四行詩の数が出てきて、番組スタッフが取り違えただけと推測しています。ですからいくら綿密に数を数えても合わないのではないでしょうか。たとえばシャヴィニーの著作に暦から集められた141篇の四行詩が的中したものとして追加されたとか・・・

> 彼の予言ならば当然『予言集』に入っているんだろう、というような思い込みで誤認していたとしてもおかしくないように思えるのです。

もちろんそういう可能性もあるでしょう。そのために番組スタッフは専門家であるsumaruさんへ問い合わせて不明点をクリアにしょうとしていたわけで、その情報を踏まえてのあのナレーションを見ると数は大きく盛っておけばいいやくらいの安直な対応であったとも考えられます。書籍版を見てもそうですが、意図的とまでは言えないまでも結果的にずさんな仕事であったのは認めざるを得ません。sumaruさんが番組スタッフをかばいたいのはよくわかりますが。(^^;

_ s ― 2014/12/31 09:06

>> BSプレミアム版の「141篇」の出所は不明なままですが、そこまで細かい数字で限定されている以上、おそらく現地の専門家が何かそういうことを言ったのでしょう。

>この数字はノストラダムスの死後に見事当たった予言の数というよりは、現地の専門家(アルマンさん?)と的中の話をしているときにプレザージュの四行詩の数が出てきて、番組スタッフが取り違えただけと推測しています。


 今更ですが、竹下節子さんの『ノストラダムスの生涯』p.211にそれらしいことがでていることに気づきました。竹下さんがそのように書いた根拠は不明ですが。

_ 新戦法 ― 2015/01/02 23:44

s さん、

改めて竹下さんの本を確認しました。確かに「・・・1594年に、『予言書』の中から141句を取り出して、ノストラダムスの予言があたったものを年代順に並べてみせた。」とありますね。おっしゃるようにここがソースの可能性もあると思います。ただし、この部分は『予言書』をアルマナと読み替えれば辻褄が合います。

212頁には「1555年の予言(四行詩の形でないもの)の中に「時を告げる大鐘は、独裁者の死の上に壊れ、嘆きや叫びが・・・」とあるのは」という記述が見られ、明らかにプレザージュの2番(旧3番)の引用を四行詩ではないと誤認しています。ここから竹下さんのなかで予言集とプレザージュについて少々混乱があったようにも受け取れます。

_ sumaru ― 2015/01/04 00:25

明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

>s さん、

すみません。それは私です(^^;
sだけ入力した後に入力補助のボックスからsumaruをえらんだつもりだったのですが、きちんと選べていなかったようです。
紛らわしくなってしまって申し訳ありません。

_ 新戦法 ― 2015/01/04 22:35

sumaruさん、

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。また大事典の更新も期待しています。

> すみません。それは私です(^^;

おおっ、そうでしたか。このマイナーなブログの記事に対して随分と細かく調査している人がいるとは思いましたが。(^^;

どなたであれ書き込んでいただくのはありがたいことなのであまり気になさらないでください。

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
本ブログの正式なタイトルは何ですか。

コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://asakura.asablo.jp/blog/2014/12/21/7521497/tb