ゲーテハウスに行ってきた2014/06/21 23:08

今日ドイツの出張から帰国してようやく家に戻ってきた。今回は月曜日の夜中の便で出発、金曜日の夜の便で帰ってきたので飛行機の搭乗時間がいつもより短った気がする。半日ほど時間が取れたのでフランクフルトに移動、祭日のため店は閉まっている。街並みを当てもなくとぼとぼ歩いているとゲーテハウスの道案内が目に留まった。25年ほど前はじめての海外出張のとき、フランクフルトの市内観光でゲーテハウスを訪れたことをおぼろげながら思い出した。そのときは上司の後について行ったので他にどこをまわったのかあまり記憶にないが、そこだけは印象に残っていた。

ちょっと覗いてみようとチケットを買ってなかに入ると、ゲーテの住んでいた家とゲーテミュージアムに分かれている。観光ガイドブックにも載っているので、その日も外国人の観光客が多かった。ゲーテの家は4階建でそれぞれの部屋に当時の家具や調度品などが置かれてある。ドイツ語、英語とともに日本語で「手を触れないで」と書かれたプレートが至るところに貼ってあるが、日本人はそんなにマナーが悪いと見られているのだろうか。おそらく個人ではなくて集団で来たときに気持ちが大きくなり、目に余るようないたずらをよくしたのだろう。日本人としてはちょっと気恥ずかしい感じがした。

一番興味深かったのはゲーテの書斎である。本棚のなかにはそれこそカビでも生えたかのような古書が並んでいた。ここからあの『ファウスト』が生まれかと思うと感慨深い。『ファウスト』といえば、ノストラダムスの予言集に言及した箇所が有名である。果たして予言集は蔵書にあったのだろうか。『ファウスト』の原書は手元になかったため入口の売店でJohann Wolfgang Goethe "FAUST ERSTER TEIL INSEL"ヨハン・ヴォルフガング・ゲーテ『ファウスト第一部インセル版』(1974年初版)を購入した。価格は7.50ユーロの手頃なペーパーバック。いっしょに子供向けの『ファウスト』絵本版も購入した。

1928年に岩波文庫より森林太郎(森鴎外)の翻訳が出ている。ちくま文庫版を底本としてインターネットの図書館、青空文庫でも公開されている。行番号417-420にこうある。原書では29頁、行番号無。
 さあ、逃げんか。広い世界へ出て行かぬか。
 ここにノストラダムスが自筆で書いて、
 深秘を伝えた本がある。
 貴様の旅立つ案内には、これがあれば足りるではないか。

このフレーズはたま出版の『ノストラダムス大予言原典 諸世紀』に奇妙な翻訳で紹介されているし、五島勉氏やフェニックス・ノア氏も自著で取り上げている。しかし、これをもってゲーテがノストラダムスの予言集を手放しに信奉していたとはいえない。実在のヨハネス・ファウスト博士と同時代で同じカテゴリーの人物と見ていたのは間違いない。1983年に出版された、長谷川つとむ『魔術師ファウストの転生』では様々なファウスト伝説を取り上げている。その本でファウスト生誕五百年祭の行列パレードに「最近日本でも予言書で有名になっているノストラダムス」(30頁)が参列していたのには笑える。

Goethe Faust

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