外から見た日本のノストラダムス現象を考える2009/02/22 23:30

コメント欄で話題になった、海外から日本のノストラダムス現象はどのように見られているかというテーマを考えてみたい。手元に裏付けとなる資料も乏しいので多少独善的になるかもしれないがご容赦いただきたい。結論をいうと、日本ではニューエイジ思想にまみれた歪んだノストラダムス像が蔓延しており、それがオウム真理教の教祖が首謀した犯罪史上まれに見る凶悪な地下鉄サリン事件に水面下で結びついた、ということになろうか。"Nostradamus L'eternal retour"(ノストラダムス、永遠回帰)89頁では、「日本でのノストラダムス・ブームがまたまったく異質の出来事につながった」とし、麻原がノストラダムス文献学者のミシェル・ショマラのもとを訪れて資料収集していったことに触れている。この顛末について、機関誌「マハーヤーナ」1989年3月号にオウム側からの記事が載っている。

1995年、ショマラのもとに日本の警察からの事情聴取があった。行方の知れないオウム真理教の教祖との関係である。さぞかし驚き、ショックを受けたことだろう。オウムの本にはフォンブリュヌの名前も出ている。フォンブリュヌはオウムと接触することはなかったが、1999年の"Nostradamus de 1999 a l'Age d'or"(ノストラダムス、1999年から黄金時代へ)の188頁のなかで、1980年の自分の著作を見てオウムが自分と接触したいと主張したが断固受け入れを断った。ノストラダムスの名前を出すなんてなんと恥さらしなと憤慨している。海外では、日本においてノストラダムス像が正しく紹介されていないと受け取られただろう。メゾン・ド・ノストラダムスのアルマン館長と話をしたときも、日本のノストラダムス本はひどいものが多いから竹下(節子)の本を読みなさいと繰り返していた。

「インターレリギオ」1997年冬号No.32に載っているロバート・キサラの「ノストラダムスと日本のアポカリプス」では、オウム真理教や幸福の科学などノストラダムスを利用した新興宗教を基軸に日本のノストラダムス現象を手際よくまとめている。その見方はダミアン・トンプソンの"The End of Time"(時の終わり、邦訳『終末思想に夢中な人たち』)も同じである。ハルマゲドンが起きるとき、五島勉が別のものと呼ぶ救世主がアジアから出る。1970年代に訳されたノストラダムスが新世代のグルたちに深い印象を与えた。麻原は、五島勉の解釈を受け入れた桐山の阿含宗に一時期入信していたし、その後川尻氏の著作を読み、手紙を書いたり自分で解釈した。すでにノストラダムスは日本の大衆文化の一部と化していた。そこで信者を獲得するためにノストラダムスの名前を利用したのだ。

彼らにとっては、ノストラダムスが予言した大変動はこの世の終わりではなく、この世に新しい文明が生まれる前兆である。その正当性をノストラダムスの予言詩に求めるために資料を入手しに行ったのだろう。結論は最初から決まっていた。キサラがいうように、宗教的に大きなマーケットを握ろうとして、ノストラダムスの予言がマニュアル化されたというのは不幸としかいいようがない。

コメント

_ 研究者 ― 2009/02/23 06:41

こんにちは、新戦法さん。

今回のブログはノストラダムス現象の話題やマリオのサイトのリニューアルなど大変な力作でした。(^^;

>彼らにとっては、ノストラダムスが予言した大変動はこの世の終わりではなく、この世に新しい文明が生まれる前兆である。その正当性をノストラダムスの予言詩に求めるために資料を入手しに行ったのだろう。結論は最初から決まっていた。キサラがいうように、宗教的に大きなマーケットを握ろうとして、ノストラダムスの予言がマニュアル化されたというのは不幸としかいいようがない。

確かにその通りですよね。このような結果になってしまって本当に残念です。ノストラダムスの予言と日本の一部の新興宗教には奇妙な縁があったようですね。本当に色々なことを考えられさせます。

新戦法さんやsumaruさんは外国から見た日本のノストラダムス現象なんて考えていてすごいですね。(^^;

_ 新戦法 ― 2009/02/24 00:56

研究者さん、いつも早朝の書き込みありがとうございます。

> ノストラダムスの予言と日本の一部の新興宗教には奇妙な縁があったようですね。

当時、一ノストラダムスファンとしては考えさせられるところが多分にありました。その縁というのが偶然なのか、或いは必然だったのか、その辺りはどうお考えですか。

_ 研究者 ― 2009/02/24 06:34

新戦法さん、

>その縁というのが偶然なのか、或いは必然だったのか、その辺りはどうお考えですか。

どうなのでしょうかね。予言と宗教の親和性は強いと考えているので、やはり必然だったのではないでしょうか?

ただノストラダムスの予言が新興宗教に利用されたのはちょっと残念です。それもあんな凄惨な事件が起こるとは、予言と信仰の一体化の恐ろしさを感じます。

_ 新戦法 ― 2009/02/24 23:51

研究者さん、

> 予言と宗教の親和性は強いと考えているので、やはり必然だったのではないでしょうか?

オウムの事件が予言と融合した結末として、起こるべくして起こったというのは、ただただ驚くばかりです。

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