人類史のなかの定住革命2008/09/06 23:52

西田正規 人類史のなかの定住革命 講談社学術文庫 2007年 を読んだ。ヒトは自分たちの祖先がその大昔にどんな生活を営んできたかちょっと気になるものである。本書によると、霊長類は進化の過程では不快なものに近づかない、危ういものから避けて生活する遊動生活を基調としていた。約1万年前に定住化、社会化が起こりムラが出来ていった。これを定住革命と命名している。自分自身をそうした太古に置いて考えてみると、生きていく上で一番重要なモノは当然食糧である。農耕を知らない時代をイメージすると自然のなかに生息しているてっとり早く食べられる木の実、身近にいる魚や獣を追うことだろう。

まさにアメリカのテレビドラマLOSTの生活そのものである。気候が年中温暖であれば食糧は常に手の届くところにあり備蓄する必要もない。狩猟採集の遊動生活してどんどん中緯度地域に進んでいくにつれて四季の変化を受け入れざるを得なくなる。冬場はすぐ手に入る食糧も見つからない。備蓄できる食糧を考えねばならない。そこで牧畜や農耕といったその土地にどっしりと根を下ろしてイエを作り、集団で手分けして様々な食糧を確保していくことになる。本書では縄文や弥生時代の化石、現代の集落の形態などから人類史のなかで画期的な定住革命が起きたと見る。なるほど、理路整然としていて説得力のある話である。

ヒトは自らの危険を守るため、狩猟のために手に棍棒などを持ちながら直立歩行をする。そのため敵と仲間とを区別して声を掛け合うようになりコミュニケーションのための言語が必要となった。フェーストゥフェースで声を掛け合うことで無用な争いを避けて集団生活を送っていたことだろう。ヒトの根源はそう簡単に変わるものではない。本書の見方でいうと、今日の携帯電話やメールだけでヒトとヒトとのコミュニケーションがきちんと取れなくなったとき、思いもよらない犯罪が起こる可能性がある。確かにニュースで昨今の事件を見ていると、あながち間違ってはいない感じがする。