ノストラダムスと陰謀論2008/08/11 23:19

最近ブックオフで単行本の500円均一というセールがあった。500円ならとネタになりそうな本を物色していると、今や懐古趣味ともいえるトンデモの予言解説書が見つかった。小石泉 『ロスチャイルド家1999年の予言書 悪魔(ルシファー)最後の陰謀<プログラム>』(第一企画出版、1993年)である。副題には「人類の半数は殺され日本人は奴隷になる」なんて随分と過激なキャッチフレーズ(?)がついている。著者はプロテスタント牧師ということで聖書の予言に基づいて世界の運命を描き出している。1999年うんぬんとあるからノストラダムスに関する記述もあるかと、ペラペラ斜め読みしたところ、どうもこの著者はノストラダムスの予言に対抗心を持っている風にも見える。

文脈とは関係なく突拍子もないところでノストラダムスを引き合いに出すのだが、その内容は五島氏の本の受け売りでしかない。そもそもソ連崩壊後の1993年に書いていると本文でことわっているのに、ソ連が復活して中東に侵攻すると断言している。これって五島氏の『大予言Ⅱ』のシナリオをもとにした古い原稿を再利用したのではと勘繰りたくなる。そこを前提に延々とフリーメンソンやらイルミナティやらシオンの議定書などを持ち出して世界の破滅を描く。今となっては空しい話が続いていく。38頁には「私はノストラダムスと言う人間についてもっと詳しく調べてみるほうがいいと思う」と書いておきながら久保田政男氏の「ノストラダムスは『アンネの日記』と同様にフリーメーソンによる第二次世界大戦後の創作だ」を引用しそれに従う論を展開している。

久保田氏の『フリーメーソンとは何か』という本も手元にあったので該当部を見てみると、この部分は「この二作は、フリーメーソンの戦後の作文である」としノストラダムスの予言がレーガン政権の方向性を示すものと主張する。久保田氏の本は1981年の出版だからノストラダムスの予言と陰謀論を結びつけた先駆けではないかと思う。その後1991年にはフリーメーソンが予言に従って日本と世界を動かしているという本が現れている。アポカリプス21研究会の『ノストラダムス大予言の謎』(文庫版『ノストラダムス大予言の極秘真相』)である。で、小石氏の結論はというと、救いの予言として人類を救うためのキリスト再臨を持ち出す。そして再臨のイエスをノストラダムスが恐怖の大王と呼んだのではないかと記している。

28頁には「ノストラダムスの予言は私が見る限り間違っている」といっているのに・・・どうしてこんな支離滅裂な話になってしまうのか。参考文献の一番最後のところに「宇野正美氏の著書及び五島勉氏の著書」とある。確かにこのお二方の説を取り込んでいくと話がどんどん空中分解してしまうのもやむを得ないことかと納得させられる。

コメント

_ 研究者 ― 2008/08/12 15:44

この90年代に多かった終末論の作者達は今何をやっているんですかね。
私もこの時代にUFOやムー等のトンデモ本を買いあさりました。

_ 新戦法 ― 2008/08/12 23:58

研究者さん、今晩は

> この90年代に多かった終末論の作者達は今何をやっているんですかね。

上の本の著者の牧師さんは本業のほうで活躍されているようです。日本橋エクレシアで検索するとWebが見つかると思います。トンデモ本を執筆していた皆様方はきっと一時の気の迷い(?)から抜け出して本来の仕事に精を出しているのではないでしょうか。(^^;

_ 研究者 ― 2008/08/13 15:44

コメントありがとうございます。しかし、五島氏の「人類滅亡説」をはじめとする数多くの終末論は信じようが、信じまいが当時の青少年の深層意識に大きなマイナスになったのではないでしょうか。
マスコミの金儲けが引き起こした産物だったのでしょうか。それとも当時の日本人の集合的無意識が必要としていたのでしょうか。

_ 新戦法 ― 2008/08/17 00:52

研究者さん

> しかし、五島氏の「人類滅亡説」をはじめとする数多くの終末論は信じようが、信じまいが当時の青少年の深層意識に大きなマイナスになったのではないでしょうか。

終末論自体は前七世紀のゾロアスターをはじめとした宗教において世界の終末のイメージが未来に置かれていました。そうした終末論はそれまで日本ではなじみの薄いものでした。ちょうど終末ブームのときにそうした神話や幻想文学が紹介されるのも当然といえるでしょう。

問題なのは、五島氏独特のゆがんだ終末論がノストラダムスの予言をだしにして免疫のない青少年に対して深く意識下に刻印を押されたことかなと思います。マスコミの金儲け主義もそうですが、それだけでは不十分でやはり五島氏の筆力によるのが大きいのではと思料します。

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