どうしてノストラダムス予言集は諸世紀と呼ばれたのか ― 2007/10/20 22:40
ウィキペディアのミシェル・ノストラダムス師の予言集の項が修正されている。「諸世紀」という呼び方はフランス語のCenturie(百の集まり、転じて百詩篇)が英語のCentury(世紀)の混同によるというのは間違っていない。この呼び方を一般の読者に広めたのは言わずと知れた五島勉氏。そして誤訳だとことあるごとに喧伝したのが志水一夫氏である。この辺の話はノストラダムス雑記帳(http://www.geocities.jp/nostradamuszakkicho/index.html)の「志水一夫氏の関連書へのツッコミ」に詳しく紹介されている。では五島氏の『ノストラダムスの大予言』の前後でこの名称はどういった経緯で定着していったのか。手許の文献で追ってみたい。
まず渡辺一夫氏の『ルネサンスの人々』(1949)では「豫言集」の詩百篇(サンチュリ)としている。黒沼健氏は初出(1957)では「ミシェル・ノストラデムスの真実なる大予言」とし、『未来をのぞく話』(1962)で「百詩集」という形式と説明し、サンテュリーとルビを振っている。澁澤龍彦氏は『黒魔術の手帖』(1961)で「百詩篇」という予言集と書いている。ここまではまあ問題はない。はじめて「諸世紀」という言葉が登場したのが『魔法 その歴史と正体』(1961)で平田寛がCenturiesを英語と混同して、『諸世紀』と呼ばれた予言集と誤訳をした時。さらに荒木俊馬氏も『西洋占星術』(1963)で占星予言書”世紀”(Centuries)と誤訳している。門馬寛明氏の『西洋占星術 あなたを支配する宇宙の神秘』(1966)では澁澤氏にならって『百詩篇』という予言書としている。
『予言 未来をのぞいた人々』(1965)や『超現実の世界』(1971)では特にサンチュリに関する言及はない。『大予言』の直前に刊行された『オカルト』(1973)では予言書を『百年間』と訳しセンチュリーズとルビを振っている。これは今まで指摘されたことがなかったと思うが、日本人の著者で初めて「諸世紀」という呼び方を用いたのは佐藤有文氏で『世界のなぞ世界のふしぎ』(1971)にこうある。「・・・1555年に、フランス革命から紀元七千年までを予言する『ノストラダムスの諸世紀』という本を書いた。」記述の内容はさておき、この名称を五島氏が転用した可能性は高いだろう。
こうして見ると、諸世紀という呼び方は英語で書かれたノストラダムスの予言の紹介した本を、フランス語に詳しくない訳者が英語と見誤って生じた誤訳であることがわかる。60年代から70年代にかけて脈々とこうした流れができていった。五島氏は予言集に『百の集合』という意味があるとも書いていたが、結局「諸世紀」→「Centuries」→「Les siecles」と英語の世紀をわざわざフランス語に訳してしまったのだ。五島氏以後は随分と長きに渡り「諸世紀」という通称が日本で定着してしまったのは周知の通りである。
まず渡辺一夫氏の『ルネサンスの人々』(1949)では「豫言集」の詩百篇(サンチュリ)としている。黒沼健氏は初出(1957)では「ミシェル・ノストラデムスの真実なる大予言」とし、『未来をのぞく話』(1962)で「百詩集」という形式と説明し、サンテュリーとルビを振っている。澁澤龍彦氏は『黒魔術の手帖』(1961)で「百詩篇」という予言集と書いている。ここまではまあ問題はない。はじめて「諸世紀」という言葉が登場したのが『魔法 その歴史と正体』(1961)で平田寛がCenturiesを英語と混同して、『諸世紀』と呼ばれた予言集と誤訳をした時。さらに荒木俊馬氏も『西洋占星術』(1963)で占星予言書”世紀”(Centuries)と誤訳している。門馬寛明氏の『西洋占星術 あなたを支配する宇宙の神秘』(1966)では澁澤氏にならって『百詩篇』という予言書としている。
『予言 未来をのぞいた人々』(1965)や『超現実の世界』(1971)では特にサンチュリに関する言及はない。『大予言』の直前に刊行された『オカルト』(1973)では予言書を『百年間』と訳しセンチュリーズとルビを振っている。これは今まで指摘されたことがなかったと思うが、日本人の著者で初めて「諸世紀」という呼び方を用いたのは佐藤有文氏で『世界のなぞ世界のふしぎ』(1971)にこうある。「・・・1555年に、フランス革命から紀元七千年までを予言する『ノストラダムスの諸世紀』という本を書いた。」記述の内容はさておき、この名称を五島氏が転用した可能性は高いだろう。
こうして見ると、諸世紀という呼び方は英語で書かれたノストラダムスの予言の紹介した本を、フランス語に詳しくない訳者が英語と見誤って生じた誤訳であることがわかる。60年代から70年代にかけて脈々とこうした流れができていった。五島氏は予言集に『百の集合』という意味があるとも書いていたが、結局「諸世紀」→「Centuries」→「Les siecles」と英語の世紀をわざわざフランス語に訳してしまったのだ。五島氏以後は随分と長きに渡り「諸世紀」という通称が日本で定着してしまったのは周知の通りである。
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