久しぶりにノストラダムスの洋書を注文した その22007/03/08 00:21

最近国際郵便が運んできた、ノストラダムスの洋書の紹介第二弾である。とはいってもレア本は値段が法外に高く手が出ない。あくまでお小遣いの範疇で入手できるレベルである。

3) Les prophéties de M Michel Nostradamus ..., Michel Nostradamus
2004年に発行されたノストラダムス予言集1557年ブタペスト標本の復刻版で46頁の小冊子「ノストラダムス、かの人文主義者」が別冊で付いている。1557年版はリヨンのアントワーヌ・ドゥ・ローヌが印刷したと表紙にはあるが、ブタペスト標本は海賊版であることが今日判明している。1993年にはミシェル・ショマラがファクシミリを出版しており、テクスト自体にそれほど価値があるわけではない。しかしながら原寸大で複製された予言集は、システム手帳ほどの大きさで当時の出版物の装丁が偲ばれる。ジェラール・モリッセの解説は現在の実証的研究の知見を盛り込んで手際よくまとめられている。ブタペスト標本の画像はインターネット上で閲覧することができる。今回入手した複製は画像を多少クリーニングしたもの。
http://www.bvh.univ-tours.fr/OSZK_8192/OSZK_8192.pdf

4) Nostradamus, mode d'emploi. La Clé des prophéties, Jean-Paul Clébert
1981年に出版されたクレベールのノストラダムス研究書。その後も1993年にノストラダムスの伝記、2003年には非常に分厚い予言集の注釈書を出版している。この「ノストラダムス、取扱説明、予言集の鍵」は見開きで左側に予言集の原文、右側に語義の注解といった構成になっており、予言集を詩集として読む際の手助けとなる。序には「真実のノストラダムス」、続いて、ノストラダムスをどう読んだらいいのかを簡単に解説している。この本を入手したかった理由はクレベールが信奉者とは少々異なる在野の文筆家であること。最初に書いたノストラダムスがどういった内容か知りたかったこと。さらにノストラダムスの解説書でよく参考文献として挙げられていたというのもある。1981年当時はまだフランスでもフォンブリュヌ本のブームが起きる前にあたる。そこでノストラダムスがどのように論じられているか、じっくり読んでみたい。

現代アラブの社会思想―終末論とイスラーム主義2007/03/08 22:48

http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi?KEYWORD=%8C%BB%91%E3%83%41%83%89%83%75%82%CC%8E%D0%89%EF%8E%76%91%7A
現代アラブの社会思想―終末論とイスラーム主義 池内恵 講談社現代新書 2003年 を読み終えた。この本はウィキペディアの「ノストラダムス現象」http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8E%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%80%E3%83%A0%E3%82%B9%E7%8F%BE%E8%B1%A1 の項で言及されていたので一度読んでみたいと思っていた。ノストラダムスの解釈本には欧州vsイスラムの対立を基軸に世界大戦のシナリオを描くものも少なくない。16世紀の勢力地図からすればオスマン帝国の脅威を意識して書かれた予言詩といえる。筆者が目にする解説書はそのほとんどが欧米の本であり、その視点は欧米から見たイスラームというのが意識しなくとも入り込んでくる。

この本はイスラームの専門家がアラブの側から文化・思想を考慮して書かれたもので新鮮な感じがする。昨今のイスラーム社会のバランスオブパワーを探る上で非常に参考になる。キリスト教に関わる終末論については幾度と目にしてきたがイスラームの終末論というのは注目したことがなかった。この本を読むと聖書とコーランの終末に関するアイテムに共通点が多いのにビックリした。コーランでのイエス(イーサー)の再臨はアッラーが遣わせたというのはちょっと意外であったが。そして終末論のなかにオカルト思想が入り込んでいった例が示されている。

この本で挙げられたアラビア語の陰謀・オカルト本は欧米で出版されているノストラダムス解釈本とそう大差がないのかもしれない。筆者はアラビア語は読めないが、アラブでノストラダムスがどういった紹介されているのか、ちょっと気になるところだ。この本の233頁以降に「ノストラダムスの予言」説といった聞き慣れない用語が出ている。その中身は明らかにされていないが1999年人類滅亡といった予言解釈に基づく終末説を謂うのだろうか。アラブ社会の現代における終末論を探る上で非常に有意義な本である。