雑誌『ムー』のノストラダムスの総力特集 ― 2019/07/12 00:01
雑誌『ムー』2019年8月号、No.465の総力特集にノストラダムスが登場している。タイトルは「甦る大予言者ノストラダムスの真実」である。『ムー』は昔から購読していたが1999年以降は気になる記事が載っているとき以外に手にすることもなくなっていた。『ムー』は過去に何度となく総力特集にノストラダムスを取り上げてきた。オカルトネタはそれほどバリエーションがあるわけではないので周期的に同じネタを使いまわすことでその命脈を保ってきたといえる。しかしまさか1999年の第四次ブームからすでに20年も経た今になってノストラダムスを取り上げるとは意表を突かれた。
平成から令和へ時代が移るタイミングで平成を振り返るといったテレビ番組にノストラダムスを扱ったものも多々見られた。今回の登場はその余韻さめやらぬうちにもう一度総力特集に据えようという英断の企画だったのかもしれない。文=松田アフラ、さらにあの五島勉氏が特別寄稿しているのも驚きだ。『ノストラダムスの大予言』電子版で加筆した部分を転用したところもなく、その中身は1999年の詩は的中していたという従来の主張の焼き直しで新味があるわけではない。松田氏はタロット占いや高等魔術の本の訳書を出しているがノストラダムス関係の著作はなかったと思う。
なにか新たな視点を示したところがないかと期待しながら読み進めてみると、今更ながら海外のガチガチのビリーバーであるディヴィッド・オーヴァソンとヴライク・イオネスクの解釈を援用したもので自称ノストラダムスファンとしてみればちょっと物足りない。イオネスクの原書ルーマニア語版?の写真がちょっと目を引いた。イオネスクの本『ノストラダムス・メッセージⅡ』(角川書店、1993)もオーヴァソンの本『ノストラダムス大全』(飛鳥新社、1999)すでに日本でも紹介されていたものだ。しかしよっぽどのマニアでない限りこの二人の名前が記憶に残っている人は皆無であろう。
日本でノストラダムスといえば五島勉なのだから、1999年の予言に対する海外の研究家の説の紹介は一般読者からすれば新鮮に映るかもしれない。そしてブランダムールの学術的研究の成果もさりげなく取り込んでいる。最近の解釈本である『秘伝ノストラダムス・コード 逆転の世界史』(海竜社、2011)のトピックも取り入れており、一般的には外れ予言と見られる逆風があるなかで、なんとか力技で乗り切って全体的にはムーらしいまとまった記事に仕上がっている。ただ、今この記事を読んで面白いと思う読者がどれほどいるのだろうか、他人事ながら少々心配になる。
本号の「ムー」クロニクル第7回には今回の総力特集の編集後記らしきものが載っている。それを読むと、ノストラダムスの名が本誌に最初に登場したのは1981年5月号(第10号)の五島氏の「ノストラダムスの謎を解くKEY」としている。確かに記事のタイトルにノストラダムスが登場したのはこれが最初といえるかもしれないが、実際には1980年3月号(創刊第3号)の総力特集「衝撃の大予言」のなかでノストラダムスはケーシーやディクソン夫人とともに登場している。おそらくこれが最初ではないかと思われる。その後1982年11月号には「ノストラダムス復刻肖像画」が特別付録についた。
1983年4月号には総力特集「大予言者ノストラダムスの秘密」(文=金森誠也)が掲載された。今となっては内容も古くなっているが初期の頃の紹介としてはわりとまともな評伝で、何より現地取材による様々なカラー写真を掲載したのが特筆される。第三次ブームの1989年以降は頻繁に総力特集や企画記事でノストラダムスが取り上げられることになる。そして最後の総力特集は、注目の1999年7月に出された1999年8月号「ノストラダムス最終大予言1999」であった。ここですっかり幕が引かれたと思っていたが、今回久し振りにノストラダムスが甦ったというのは少なからず喜ばしいことではある。
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