C・ロークのノストラダムス解釈本2009/02/12 22:55

ノストラダムス関連のドイツ語の古書を注文したのは初めてではないだろうか。今日C・ロークの『ノストラダムスの予言』Die Weissagungen des Nostradamus が届いた。副題に「暗号解読の初の発見とヨーロッパの未来とフランスの繁栄、衰退ついての解明、1555-2200」とある。ロークといえば、アルガイヤーの『悪魔のシナリオ』34頁に百詩篇3-57「血に染まっている現在から290年以内にイギリス国民が変わり様が七度目撃されるであろう」を正しく解釈した研究家として引用されている。起点を1649年チャールズ一世の斬首に置くと、その290年後は1939年となり第二次世界大戦が勃発した年にあたるという。ロークの原著73-74頁に詳しく載っているが、それによると「1939年にイギリスで最後の注目すべき変化が生じる」とある。

この本が書かれたのは1921年であるから、ロークはノストラダムスのテクストより近未来を引き出したことになる。さらに一歩踏み込んで、この年を境に顕著な危機の始まり、少なくとも没落への第一歩を意味するのだという。どうしてこれだけで第二次大戦と結びつくのだろうか。オーヴァソンはさらに深入りする。ロークのこの予言がクリツィンガー博士の本で取り上げられ、それがゲッペルス夫人の目に留まる。ヒトラーや宣伝省がこの妙録箇所を重視し、第三帝国による1939年のポーランド侵攻につながった。にわかに信じがたい話であるが、オーヴァソンは自信たっぷりに「ロークの解釈は「人類史上一、二を争う激戦の直接の原因」になった」と断言している。オーヴァソンはロークの解釈をボロクロにけなし馬鹿げた誤りとしているが、自らは注釈を施していない。

そもそもこの詩はどこを起点とするかでまったく解釈が変わってしまう。例えば英国人のレイヴァーはそれを1534年とし、終点をジョージ一世が即位した1714年に置いている。仮にノストラダムスが未来を予言できたとして、その未来の事件を起点にものを考えるだろうか、甚だ疑問である。1939年の解釈は、1914年に刊行されたニクロウの本107頁にも取り上げられている。「このとき何が起きるのであろうか、それは未来の秘密である」無用な解釈の引き金となるとは夢にも思わなかったに違いない。