王位戦第五局は羽生が勝ってカド番を凌ぐ2008/08/27 23:56

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随分と激しい将棋になった。剣と剣がぶつかってチャリンと音をたてた瞬間に勝負の行方が決まってしまう。そんな感じのする一局であった。その証拠に両者にしては珍しく持ち時間を多く残しての終局。持ち時間8時間の将棋で羽生の残りが1時間47分というのも最近ではあまり見ない。それほど一直線に将棋が決まってしまって、逆に深浦から見ると軌道修正の利かない将棋だった。私は私、あなたはあなたという単純な攻め合いはタイトル戦ではめったに出ないだけに驚きである。大事なタイトル戦であればもっとじっくりした将棋にと考えがちだが、そうすると相手の言い分を通してしまうことになる。そこでお互いに突っ張ると結果的には大差の将棋になりやすい。

封じ手は予想した△4五歩と反発する手だったがその後の展開で桂を成った手に62手目△3三同銀上としたのが意外な一手。5筋に歩が伸びているので銀は4二に置いておいたほうがいいと思ったからだ。先手は角を切って75手目▲5二銀と遮二無二攻めていく。先手の穴熊がどれ位遠いか、後手のと金がどれくらい利いているのか、大局観が求められる局面である。結果的には羽生の判断が勝っていた。防戦一方の後手は何とか反撃して攻め合いを目指そうと80手目△6九銀と割打ちをかける。しかし先手はこれも手抜きで後手を攻める。見た目には派手な展開であるが局面としてはわかりやすくなってしまった。先手の勝勢である。そして89手目▲5三角と只捨ての角を打ったのが決め手。

以下は6七の銀を拾ってすべての駒がきれいに働いて後手玉を即詰めに打ちとった。歩以外で詰みに関係しない駒は3枚しかないという美しい投了図が出現した。やはり羽生は一筋縄ではいかない。深浦は次の先手番が防衛に向けて大きな正念場となる。羽生の作戦は流行の一手損角換わり9四歩型と予想してみるがどうだろうか。