カルダーノのコスモス2008/01/02 23:40

http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/432610175X.html
アンソニー・グラフトン 榎本恵美子/山本啓二訳 カルダーノのコスモス―ルネサンスの占星術師 勁草書房 2007年 を購入した。年末から年始にかけて飛行機を乗り継いだ強行日程を終えて自宅に戻ってきた。移動時間が多いのでこれはと思う本をじっくり読もうと思っていたところ上の新刊書を見つけた。この本はルネサンスの占星術師に関する学術的な研究書でカルダーノに焦点を当てながら当時の占星術がどういったものであったか豊富な文献を駆使して論を展開している。内容はなかなか難解でそんなスラスラと読める代物ではないが、これだけ精密な議論をしているルネサンス占星術の本は初めてで興味深い論点も多い。ただし訳文は横書きで句読点にカンマを使っているなど読みづらい所もある。

まだ全部を読み切ったわけではないが第一章占星術師のコスモス、最終章、参考文献、訳者の解説とあとがきに目を通した。カルダーノとノストラダムスはほぼ同時代に活躍した占星術師という共通項があることから本書でもいくつか言及がされている。ただしノストラダムスに対するグラフトンの評価は至って厳しい。24頁には、ルネサンスの最も悪名高い占星術師ノストラダムス(当時も、また現代でも華々しいペテン師と見られている)と書かれている。この具体的な根拠となるものは示されていない。グラフトンのノストラダムスに関する参考文献はジャン・デュペブの『未公刊書簡集』と故ピエール・ブランダムールの『校訂版予言集初版』と『占星愛好家ノストラダムス』である。

ノストラダムスが顧客に対して占星術上のアドバイスを行ったのを経済活動としている。ノストラダムスが予言集の出版により名をあげて有名人として身を立てると、商売のやり方を変えて個人資産家のためのホロスコープを用意した。そしてノストラダムスがトゥベに宛てた書簡39を引用してカルダーノ流のオーダーメイド占星術を通常の業務として実践していたと見る。日本ではノストラダムスの実践した占星術がどのようなものであったか十分な紹介がされているとはいえない。本書はその入口への案内となろう。

2008年新春お好み対局を観た2008/01/03 23:33

NHKでは毎年お正月に将棋番組の特番が放映される。いろいろと趣向を凝らした企画であるが、棋士は将棋は指せるけれどもエンターテナーではないので狙い通りに面白くなるとは限らない。今回は東西対抗トリオ戦といった新しい試みである。中核に三人の永世名人を置いてその他は20歳の若手棋士と女流棋士といったフレッシュな顔合わせである。糸谷と佐藤天はNHK杯にも出場しているのですでにNHK番組には登場している。井道と熊倉はまだ女流プロになったばかりで実績もなくまったくの無名でまさに大抜擢といえる。リレー将棋にいかに豊かな表情を作れるか、怖いもの知らずのこの二人にかかっている。

さて内容のほうはお正月らしく軽いノリで見られる構成であったが、リレー将棋に考慮時間の10分というのはちょっとなじまないのではないか。なかなか一人の判断で長考するわけにもいかないし、考慮時間を取ったあとでの相談タイムもあり得ない。将棋のほうは東軍の四間飛車に西軍は居飛車穴熊で対抗。中盤西軍の不用意な手に対して東軍が思い切りよく角を切って穴熊を弱体化してからは差が開く一方となり、東軍が圧勝した。もう少しじっくりと終盤戦の醍醐味が味わえる将棋の作り方があったとも思うが、対局ルールを十二分に活用できていない。お好みであるから真剣味に欠けたところもあるだろうがプロなんだからもう少しなんとかならないものか。

特に西軍の糸谷の役割がぼやけていた。最初のインタビューのときには強気なことをいっていたのでその路線でいくかと思いきや、その後は口のなかでボソボソと何をいっているのかわからない。▲3三歩成とするところでは流れが急になるので作戦タイムを取るべきだった。将棋雑誌の自戦記を読むと筆は立つと感じたが場の空気を読んだり受け答えなどは今後の課題であろう。期待の大物新人だけにちょっと苦言を呈したい。

ジャン・ゲローの日記2008/01/04 23:39

ノストラダムスの伝記は秘書のシャヴィニィと息子のセザールの書いたものが同時代人の証言といえるものだった。しかし今日ではエドガー・ルロワの実証的なアプローチのおかげでいくつかの誤りと意識的な粉飾が明らかになった。彼ら以外の同時代の証言としてよく引用されるのがリヨンの毛織物商人でカトリック教徒である『ジャン・ゲローの日記』である。1555年、ノストラダムス予言集の初版が刊行された直後にパリの宮廷からの召喚という栄誉を受けた。その旅の途中にリヨンに立ち寄ったようでゲローが状況を記録してくれている。宮下志朗氏の『パリ歴史探偵術』には何故かカッコ書きで1550年と注釈しているがこれはあり得ない。

[1550年]サロン・アン・プロヴァンスのミシェル・ド・ノートルダムなる占星学者が当市に立ち寄った。彼は手相占い・数学・占星術に造詣の深い人物であって、過去のことを語るのみならず、未来に関しても、特定の人々について重大なことがらを予言し、人の心を透視する。そして宮廷におもむいて国王に意見を求められると、陰謀がめぐらされていることが危惧されますとも答えたという。国王陛下が8月25日以前に首をはねられる危険が大いにございますといったらしいのだ。(『パリ歴史探偵術』49頁)

宮廷に赴いたのは1555年のことで、7月14日にサロンを出発してパリに到着したのが8月15日。そうしてパリを去ったのが9月29日とされる。竹下節子氏の『ノストラダムスの生涯』105頁には「(ノストラダムスは)8月25日までに打ち首にされると心配していた」とリヨンの年代記作者の記録に残っているとある。ラメジャラーの『ノストラダムス予言全書』57頁にも同じ記述があるがルロワの本の83頁がソースであろう。ご覧のように国王陛下の首がはねられる危険なんて一言もいっていない。国王に呼ばれたもののどういう接見になるのか、本当に無事にサロンに戻ってこられるのか心配していたのである。

日記が書かれた時期が5月20日と7月27日の間というのはパリへの旅程と合う。イアン・ウィルソンはリヨンに到着したのが7月24か25日と推定している。フランス文学者の宮下氏がどうしてこうした創作めいた紹介を行ったのか不思議でならない。

LOSTのDVDを観て2008/01/05 23:21

http://www.movies.co.jp/lost/
最近はLOST(ロスト)のDVDにすっかりはまっている。正月休みの間もずっとこのDVDを観ていた。今日もシーズン2の9,10,11をツタヤからレンタルしたがあっという間に全部観てしまった。テンポのいいストーリ展開にグイグイと引き込まれてしまう。ついつい次回が見たくなる各回のエンディングの巧みさが面白さを増長している。航空機が無人島に墜落して生き残った人々に起こる様々な怪事件、全体のプロットも詳細なところまで行き届いていてよくできた作品である。このドラマを見るとまさに社会の縮図を見る思いがする。あたりまえのことだが世の中にはいろいろなタイプの人間がいる。本来であれば軽くすれ違うだけの人間がサバイバルの極限状態でどういった関係が築かれていくのか。一種の思考実験といえるかもしれない。

LOSTを観てなぜか宇多田ヒカルのディープ・リバーを想い出した。島に住む質素な人々、複雑な人間関係などイメージが重なると感じるのは自分だけだろうか。またこのドラマの映像からブルース・ペニントンの『大崩壊』38-39頁のイメージ画が頭に浮かんだ。海岸沿いで二人のボロボロの服を着た男が何やら指さして話をしている。この絵のモチーフとなったのがノストラダムス予言集の百詩篇9-66である。
 平和と団結は続き、そして変える
 階級や地位を、低きから高きへ、高きからごく低きへ
 航海、初穂、苦悩
 止めるべき戦い、市民の訴え、議論に備えて (青木栄一訳)

ノストラダムスは人気ドラマLOSTのことも予言していたのであろうか。その判断は各自にゆだねてみたい。(もちろん冗談です)

将棋の福袋を買いに行った2008/01/06 22:24

http://www.rakuten.co.jp/shogi/1862060/1862565/
昨年の社会人リーグ最終日の打ち上げの時、「もう少し将棋が強くなれるように頑張りたい」と宣言した手前なにかアクションを起こさなければいけない。よくよく考えてみると、ちゃんとした将棋盤と駒を持っていないのに気がついた。最近は棋譜もパソコンで並べて見るだけで実際に駒に触れるのは社会人リーグくらい。やはり秒読みなどで自分の指す手がいいところにいくためには実際に手に覚えさせるというのも必要である。まずはいい道具と一念発起、日本将棋連盟に行って将棋世界でチェックしていた「お楽しみ福袋」(3万円)をゲットした。

販売部で聞くと、メインとして卓上2寸盤と駒が入っているという。持ち帰って中身を開けてみると、晴月作 御蔵島つげ彫駒(21000) ヒバ卓上2寸盤(18900) オレンジ色のタオル(525) 全棋士扇子(2100) 米長扇子(1785) ねずみの夫婦箸置き(?) 清水市代クリアホルダー(315) バンカナ携帯ストラップ(735) shoちゃん巾着(525) ボールペン(368) が入っていた。カッコ内は定価。確かに通常の支部会員割引よりは安い。しかし将棋盤に駒台がついていないのはいただけない。扇子の分が駒台だったらと思うがこればかりは仕方がない。

早速駒を出して盤に並べた。まだ作りたての新品のせいか木の感触も堅い。せっかくなので今日届いた週刊将棋の棋譜、マイナビの中村-清水、A級順位戦の久保-藤井、谷川-丸山を並べてみた。詰将棋も盤に並べて解いてみた。やっぱりナマ盤とナマ駒はいいものだ。将棋が強くなるというよりも棋譜を鑑賞するのはやはり盤に並べるのが一番である。