ドイツ語版アンリ二世への書簡の注釈書2008/03/25 22:28

先ごろアンリ二世への書簡の註解について簡単な紹介を行った。最近の本で書簡の部分訳を読めるものとして『ノストラダムス予言の真実』114-116頁がある。引用された節の番号は1867年のアナトール・ル・ペルティエの校訂テクストだが、もちろん1558年版というのは誤りだ。この部分は聖書や占星学に基づいた年代記を記したもので、以前ノストラダムスサロンで取り上げたことがある。占星学に基づいた天体の配置については、ドイツのクリスティアン・ヴュルナーの『ノストラダムスの神秘』(1926年)が権威ある注釈として過去の注釈者たちに利用されてきた。エドガー・レオニもこの部分に関してはヴュルナーに従っているところが大きい。このヴュルナーも88-121頁でアンリ二世への書簡の仏独対訳を行っている。

2005年、書簡をタイトルにつけたドイツ語の本が刊行された。"Die Botshaft Der Nostradamus-Brief an Heinrich II."(ノストラダムスのアンリ二世への書簡にみるメッセージ)ヨハネス・フロイツミードルによる注釈とある。ざっとみると、序文、注釈のヒント、その後に膨大なドイツ語訳と注釈が続く。(19-156頁)この著者は節を108に分割、ドイツ語訳の下に注釈を置いている。残念ながら注釈は学術的なものではなくところどころ現代的解釈が見受けられる。157頁からのテーブルでは書簡の節と当てはまる年代を対比させている。170頁から1568年ピエール・リゴー版と1668年ジャン・リボウ版のヴァリエントをフランス語原文で表にしている。それからラテン語のモットーのリスト、オリエントに関する記載のリスト。最後にリゴー版とリボウ版のコピーを載せている。

この本には四行詩の注釈は一つも出てこない。あくまでの書簡の注釈と関連事項に終始している。実証的な注釈にはほとんど役に立たないと思われるが、異国のビリーバーが書簡というフィルターを通じて現代をどう捉えているか、ノストラダムス現象としては面白いかもしれない。